御用聞きの発想 と選挙

投稿日時 2012-11-16 | カテゴリ: 時事問題

ついに政局が移動する時期がきました。仮に、次の選挙で自民党が政権を奪還しても、今回の件を教訓に、次の時代に繋がる政治を心がけていただきたいものです。
個人的には、民主党政権で、管氏も、野田氏もそれなりにやることをなさったと思いますが、内閣支持率を気にすると、その場その場でやりたいことがなかなかやれなかったということでしょうか。
 ついでに、辞任した石原氏の都知事の評価される実績としては、排ガス規制と外形標準課税(法人都民税を支払っていなかった銀行などを対象に、導入した税制)の税制改革でしょうか。実際東京の空気は格段に良くなり(正直、総交通量は少ないはずの大阪とでも雲泥の差だと思います。)、税制に関しては、制度そのものが国税に制度格上げされたのですから、一応の成功をおさめたと評価できると思います。どちらも一期目の話ではありますが。

 年齢の問題もあり、ご本人のこれからはともかくとして、現状の都政の体制は一定の評価に値するのではないかと思います。
 いろいろな方が都知事選に立候補表明されていますが、個人的には、今は弁護士より職業政治家が、現実的な政治ができる人が将来を見据えた政策を実施し、将来の布石になるような政治を実現していただきたいと思います。

−− 2012.11.23補足
 今日、告示前なのに、ある知事選予定候補を「知事候補」として応援するビラ(但し、予定を削除すれば、選挙期間中によく見かけるビラそのもの)がポストに入っていましたが、これって、事前運動の禁止にひっかかり、公職選挙法違反?
 政党や選対本部だとダメで、「つくる会」だとよかったのでしたっけ?弁護士会の選挙だと、選対本部を作れない時期に「つくる会」を結成しているような気がするのですが。
 さすがに弁護士だと法の不知は言い訳にならないため、慎重な対応をと思うのですが。
 私はこれ以上、原資の当てなく生活保護等の拡充をされてもと思っている立場のため(セーフティーネットとしての生活保護制度を否定するものではないが、このまま無為に膨張させることは制度破綻すると考えます。)、この候補に関心があるわけではないのですが、ビラの両面には、ほぼいっぱいに候補予定者の経歴、政策しか書いていないのだから、ぎりぎりをねらった脱法と言われても仕方ないような気がします。−−−

 さて、今回は、御用聞きの話をしたいと思います。もちろん、古い話ではありません。現在進行形の話です。今、高齢者の御用聞きとして一番アンテナ精度が高いのは、ズバリ、銀行の金融商品販売担当者だと思っています。

 最近の新聞ネット記事で、ある都市銀行の入社2年目の投信レディ(昔の言葉で証券レディという言葉がありました)のトップクラスの営業成功談が載っていましたが、ずばりそのとおりで、「高齢者は身近でない物事を理解できない」「信頼を得るためには、高齢者にわかる世間話に何時間も付き合う」「投資信託などの金融商品の知識経験があることで勝負するのではなく、親身になって話に付き合うことが、信用されることがポイント」と書いてありました(単刀直入にそうは書いていないのかも知れないが、読む人が読んで要約すれば、そうとしか読めない)。
 確かに、それは正しい見解です。高齢者は保険を売りつける対象ではないし、多額の金融商品を売りつける対象でもありませんが、最近の銀行のキャッチフレーズは、何を根拠にか、運用もきちんとできそうもない世代に、安定資金とリスク資金を半々にしましょうとか、訴える世代が違うのではないかということをやっているような気がします。つまり、普通のやり方では販売できない商品を、販売しようというわけですから、情に訴える方が販売につながるわけです。
 ここ十数年、信託銀行は、多額の退職金を得て、お金を持て余している世代をターゲットに、わけのわからない金融商品を売りつけ、顧客がどんなに損しようが売ったら終わりで知らん顔、75歳になれば内規の年齢オーバーで全額売却させて、変額保険(これも、バブルの後、都銀がさんざん売りつけてかなり問題になった商品です。)に加入させるという定番的パターンをやっています。私が知る限りでも、複数あるわけですから、してやられた人は、多いのではないかと思われます。

 昼間に信託銀行に行けば、お年寄りの窓口相談ばかりで、しかも一件につき長時間相談するのですから、その丁寧さは群を抜くことは認めますが、「そもそも商品をきちんと理解しているとは思えない窓口レディに長時間説明してもらっても、同じではないか」と思うのは、私だけなのでしょうか。自分の用はせいぜい10分もあれば楽に終わるのに延々待たせられた時に、周りを見渡せば、高齢者ばかりで、また、とても金融取引には向かなそうな高齢者が多いので、余計にそう思います。

 さて、高額金融資産保有者に対するリサーチの度合い、商品開発能力は、各銀行で差があります。そのため、ちょっと前まで「150の投資信託のラインナップがある」(どういう特徴があるか言えるのか、どのくらい、運用会社に変化があるのか疑問。150の投資信託を販売する時点で、投資信託の意味を分かっているのか疑問。適切なアドバイサーになりえず、売ったら知らん顔の典型ではないか。)とアピールしたり、更には、「毎月定額のお金が受取れる元本保証の投資信託」(そもそも、元本しか保証しないのであれば、毎月満期が来るように定期預金を設定した方が、確実に利息が付くのでよほど手堅い。また、そもそも高額貯蓄者層は比較的多額の年金をもらうので、毎月定額のお金を引出す必要がさほどないからどの程度、定額受け取りの意味があるのか疑問。ただし、定額受け取りを利息の受け取りと誤解する高齢者には受けがいいという逆の不安がある。)を売り出している銀行もあります。
 「一任勘定の投資信託を新発売」と新聞発表した銀行もありました。最初から、あるいは高齢になったからこそ、購入販売のタイミングが判断できず、多額の金融商品を取り扱えない高齢者が、たまたま退職金など高額の資金を手にしたために、運用をどうしようかと迷い、それに乗じて、銀行として投資信託を購入させようとするわけで、売り時期も判断できない高齢者に大損させるよりも、購入から売却まで全部お手伝いしましょうというものなのでしょう、善意に解釈すれば。
 しかし、残念ながら、そこまで、優れ者のトレーダーがいない、あるいは優秀なトレーダーが運用を任されていないのが日本の現状でしょうか。一任勘定は、腕利きの投資運用者あるいは、そういうシステム(成功報酬の歩合を導入するとか、手数料も良心的であることが前提)があることが大前提で、腕利きでないならば、大損の危険があるわけです。
 弁護士からすれば、一任勘定と言えば、都市銀行が、バブル華やかなりし頃、不動産担保に億単位を貸し付けて販売し、顧客に大損させた、いわくつき商品というイメージがぬぐえませんが、都銀でないから、知らないということでしょうか。

 一任勘定の投資信託を販売するのであれば、あるいは金融商品の取り扱いで儲けるというのであれば、銀行も、外国ファンドに投資し、運用を任せてあとは知らないというわけにはいきません。
 毎年信託報酬として損益にかかわらず信託財産の1%以上も運用会社に支払えば、資産総額は目減りしますし、販売手数料、信託財産留保金を合計3%以上も取れば、更に少なくなります。中間マージンを減らし、総経費を少なくし、運用実績を上げる努力をすべきです。
 多額の金額を販売するわけですから、少なくとも、直接の運用会社たる完全子会社の中に、自前のいいトレーダーを育成する程度の意気込みがあっていいと思います。
 ウォール街もそうですが、多額の金額を扱うトレーダーが大失敗をすると、即、精神科の病院に入院になったりすると冗談のように言われたりしますが、その環境は過酷で、トレーダーは一生の職業にできるものではないと思います。トレーダーの素養としてギャンブルの感性があることと、ある種のギャンブル的嗅覚が働くということが必要ですが、一種体力、精神力勝負なので、やはり若さは必要という気がします。熟年、壮年でもバリバリできるトレーダーは、素質がかなりあるということなのでしょう。
 証券会社ではありませんが、金融商品を広く販売するのであれば、銀行も、あるいはその子会社たる運用会社も、若く、活きのいい、ある程度素質が望める人を最長10年程度使っていく前提で、育てていくしかありません(その後は、窓口担当に回して、世間話以上の説明ができるような体制にしてほしいものです。)。当面の営業成績だけにとらわれず、ぜひ前向きに、長期的に儲けられる体質となる人材育成にも取り組んでいただきたいものです。
 そうしなければ、債権国としての発展はないのではないかと思います。
 日本人には多くありませんが、ギャンブラー的な素質のある人も中にはいます。

 さて、本題です。窓口レディの御用聞きの結果でしょうか、とある銀行が出した金銭信託商品に、5年で元本がゼロになる寄付目的の金銭信託というのがあります。つまり、「あなたが預けたお金を、銀行が責任をもって5年で0円にする金銭信託」が売り出されました。これでは、損した云々の話はでようもありませんが、最早、金融商品ではありません。
 これを読んで、5年でゼロになるのであれば、それはわざわざ信託にする必要はないのではないのかとか、誰かにあげるのであれば、そのまま直接寄付した方がよほど喜ばれるのではないか、せいぜい信託の形をとることで、銀行や投資会社の手数料稼ぎをさせるだけではないのかとか、思うところは当然ありますが、ひとまず、これは問題にしません。

 私は、優秀な御用聞きの意見が反映され発売された商品が、5年でゼロになる寄付目的の金銭信託で、こういう商品でも集客があると判断したことに着目したいと思います。

 本来であれば、寄付は直接するのがいいに決まっています。でも、このような商品が販売されるようになってしまう日本の現状に問題があると思います。
 寄付する体制が、寄付を受ける側になさすぎるのです。「全額誰かに無償でお金をあげます」という金銭信託が広く一般に販売されるほど、日本には、寄付をしたいと思っている高齢者がいるわけです。にもかかわらず、受け入れ態勢がないから、寄付という制度が成り立たないという現状は、この財政難の折、是非ともすぐに打開すべきだと思います。
 寄付が進む条件は、簡単です。
 1 運用目的を限定し、適正な運用をする
 2 運用結果を目に見える形できちんと報告し、決算など運用報告の透明性を図る・・・そのお金が何に使われ、どういう結果をもたらしたのか明らかにする
この2点に尽きます。
 
 東京都が募集した尖閣諸島の募金のが14億円集まり大成功を収めた要因は目的と結果がはっきりしていたことだと思います。
 これに対して、被災地の義捐金は、何に使われたのか分からないし、結果の報告もないわけですから、これでは個人の支援は長く続きません。同様に、ふるさと納税にしても、納税する側はわざわざ面倒な手続きを踏んで遠隔地に納税するわけですから、何に使われたのか、明確にしてもらった方が、寄付の励みになるわけです。プレゼントは、副次的な要素にすぎないと思います。
 日本の銀行の優秀な御用聞き(金融商品を取り扱う能力があるかどうかは別として、お金に余裕があると言われる高齢者向けの御用聞きの能力があることは否定できない事実です)が、寄付に活路があると言っているわけですから、これは、傾聴に値します。
 是非とも、寄付を受け付ける、受け付ければ財政が潤う、市町村、若しくはボランティア団体は、これを実践し、高齢者の素朴な要望に応えていただければと思います。




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