産休制度 育休制度

投稿日時 2009-04-18 | カテゴリ: 時事問題

 最近、メディアで、産休・育休の話や、保育園待機児童の増加が話題になっています。

 ご存じのとおり、産前産後の休暇、育児休暇は、労働基準法に定められています。
 私は、出産当時、労働者ではなかったので、産休、育休制度を使うことはありませんでしたが、産後は、4週間程度は休みました(少し出勤していた)。
 母体のためにも、産前はともかく、産後の休養は絶対に必要です。特に、難産で想像以上の体力を使った場合には、ゆっくり休養しなければ体が回復しません。また、初産の場合も、昼夜の別なく数時間ごとに赤ちゃんのお世話をするライフサイクルに慣れないので、その分、やはり休養が必要です。

 休養を十分に取らないと、どうなるか。
 基礎体力の回復が遅れ、風邪を引きやすくなったりするのではないでしょうか。授乳期は、風邪薬を使わないため長引くのです。私も、依頼者に「いつも風邪引いていますね」と言われたことがあります。

 では、育休は取れるかと言えば、出産年齢は、曲がりなりにも働き盛りの年齢ですから、育休取得は現実的に厳しいのではないでしょうか。私の周りでは、育休を取っているのは、公務員が多いです。
 弁護士の場合には、育休取得は現実問題として厳しいのではないでしょうか。出産前から、新規案件の依頼は全部断るとしても、それまでの仕事がなくなることはないし、独立していれば、一旦完全閉鎖して、新たにやり直すというのも大変です。勤務弁護士なら、そこまで大変ではないでしょうが、周りに余分な仕事の負担の与えるため、それはそれで気を遣うので精神的に大変です。

 育休を取らないとすると、次に問題になるのは、「いつ、保育園に入れるのか」です。
 世の中シビアなので、考える人は、産み月まで計算にいれる人もいるようです(私は、そこまで厳密に考えませんでしたが)。
 つまり、住んでいるところの自治体で、4か月の乳児から多く受け入れる場合には4月に4か月になるように産むのが、保育園対策としてはベストなのです。4月は、一番園児の受け入れが多いので、入園できる確率が上がります。
どの自治体も、産休明け乳児を預かってくれる施設は少なく(この月齢は人件費がよりかかることも原因です。)、自治体ごとの方針によって、4か月から7か月くらいの乳児からの受け入れになるので、これは、居住する地域によって異なります。
さて、企業内保育など、職場に接近した保育施設が設立されている場合もありますが、保育園は自宅の近くに入れることをおすすめします。
職場に接近していると、子どもが元気な日はいいのですが、子どもが熱をして急に帰宅することになると、高熱を出した子どもを連れて、時には電車や車に乗せて帰宅させ、病院に連れて行くのは、大変です。子どもが高熱を出している時は、親も体力を消耗していることが多く、7キロの子ども(生後6か月くらいでしょうか)をだっこして帰ったりすると、それだけでぐったりします。職場内保育は、近所の保育園空き待機のために利用する方が実際にも多いのではないでしょうか。

 女性が仕事を続けようと思ったら、母子になるべく負担が少なくなるように、産む前からある程度考えた方が得策なのでしょう。
 
 さて、ここで医師の就業人口の問題について、考えます。
 医師の統計上の人口は、警察官の人口より多いのに、つまり、警察署を地域病院、交番のお巡りさんを診療所に例えれば、医師は日本全国に配置しても十分程度の人口はいるはずなのに、なぜ医師不足が問題になるのか。
それは、
1 最近の専門医制度による医療の縦割化により必要数が増えたこと
2 医師の中の女性が占める割合が高く、就業人口が実際には少ないこと
が原因なのではないかと考えます。
この前、眼科の医療事故があった際に、謝罪会見を開いた担当した眼科医が、学会の専門医の認定を受けていなかったことが大問題であるかのように一部マスコミが取り上げていましたが、もともと、医師はオールラウンドな資格で、医療行為であれば法律上何でもできます。
したがって、たとえば、これまでは、産科医も、麻酔をしたりしましたが、最近は、麻酔のためにわざわざ麻酔科の医師を配置するため、必然的に医師の必要数が増えます。

国家試験合格者に占める女性の割合は32.7%で、医師全体では16.5%だそうです(2004年。http://www.kunikoinoguchi.jp/katsudou/pdf/190609_shiryou.pdf)
ところで、女性が出産、子育てをすると、その分、確実に労働時間が制約され、労働能力が落ちます。
当直がある勤務はかなり厳しいし、そもそも医師になるために家中総出で子育て・教育がなされたような家庭で育った人たちが、自分の子どもを、自分が親から受けた程度の子育て・教育をさせられない家庭で育てる選択肢を選べるのかと疑問を感じてしまいます。子どものことを考えれば仕事を辞めるという考え方も出てくるのは必然で、これは、人生観の問題であり、労働環境の改善でどうなるものでもないと考えます。
とすれば、医師に関しては、子育て世代の女性医師の労働人口、少なくとも労働力の減少を盛り込み、その時期の実労働人口を低く算定した、医師養成計画を考えなくてはならないのではないかと思います。

現状は、医師会が言うように、医師の数が増えれば、医師が生活するために稼ぐ分医療費が増え、健康保険負担が増えるから、増員させないべきという事態ではなくなってきています。

なお、司法試験合格者に占める女性の割合は27%位、女性弁護士は全体の16%となっているそうですが(http://www.sendai-l.jp/chousa/pdf_file/5/5-1/5_1_2.pdf)、私が司法試験に合格した平成5年で女性合格者が2割を超えたことが話題になった程度で、そのちょっと前までは、1割いなかった頃が長かったわけです。
しかも、弁護士の場合には、法科大学院制度になるまでは、大変合格率の低い試験を、周りが就職するのを尻目に、時には家族からもいろいろ言われながら、浪人生活をして敢えて受験したわけです。誰しもそれなりにつらい思いをして合格し、また仕事に対する思い入れがある人が多いせいか、仕事を辞めるという選択肢を取る女性は、そう多くありません。




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