労働時間と給与

投稿日時 2010-07-25 | カテゴリ: 時事問題

先日、奈良の県立病院に勤務する産婦人科医2名が、7000万円あまりの残業代等を求め提訴し、また警察に対して労働基準法違反で刑事告発をしたという記事がありました。
残業代等の時効は2年間。つまり2人は、平均で2年間で3500万円あまりの残業代があったことになります。おそらくこの人にの年収は1000万円から1500万円くらいで、県立病院だったこともあり、給与体系が明確でないまま、1500万円の年間給与が1日8時間労働の対価との前提で、請求をした結果と思われます。

この事件を教訓に、今後、勤務医師の給与体系を見直すのでしょう。当直がある場合には、当直時間の全時間が拘束時間で、たとえば夜間一度も呼び出しがなく寝ていたとしても、給与の支払い対象となるため、下手すると、逆算すれば、年収1000万円以上の場合でも、基本給は21万円程度ということに実際上はなります(実際にはそうなのです。)。

良くも悪しくも、こういうケースが出てしまったのですから、公立病院においては、労働者としての医師の労働契約書の締結をしなければなりませんが、無理のできない壮年医師は、長時間勤務には耐えられませんから、逆に給与が極端に下がる結果にはなります。
訴えた医師らが、そこまでの結果を理解していたかどうかは別ですが。

年俸制の給与体系で、残業代を請求するのはあまりありません。
そもそも、我が国において、医療は保険制度で成り立っているもので、勤務医一人一人に年間2000万円以上の報酬を支払っていたら、明らかに、保険医療制度が破綻します。
制度のほころびが見えてきた保険医療制度ですが、保険医療制度ができるだけ延命されるよう、医療費の大きな部分を占めすぎる人件費削減に、医療関係者が自戒をもって、対応しなくてはなりません。
病者は経済的弱者であることが多く、病者相手の医療事業において、保険医療制度の存続は、医療事業の経済基盤の確立を図る上で不可欠の問題であることを再認識すべきです。




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