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国際問題 : 相続財産の管理制度について
投稿者 : admin 投稿日時: 2022-02-04 (229 ヒット)
今回は、真面目な法律の話です。

相続が発生した場合、日本にあっては、必ず裁判所が関与しなければならないものではなく、「相続財産の保存に必要」と判断した場合に相続財産管理人が選任され、相続財産の管理が開始されます。

 民法918条2項を根拠とする相続財産管理人の選任は、成年後見制度の延長として申し立てられることが多くなっています。
成年後見制度を利用していた方が死亡したが、相続人がはっきりしないなど、相続人の確定に時間を要する場合に申し立てます。

これ以外に相続財産管理人が選任される場合は、相続人不存在の場合の952条や、民法936条での選任もあります。
国内であれば、被相続人の債権者などが申し立てる、952条の相続人不在の場合の財産管理人選任の申立の方が今までは多かった印象です。
 
 渉外関係の弁護士の中には、952条を念頭に、日本にはプロベート手続(財産管理制度)がないと言われる方もいますが、そうではありません。
918条2項を使って「相続財産の保存に必要」との疎明をして申し立てれば、相続財産管理人を選任することができ、それは被相続人のすべての財産に対し保存処分ができるので、国内外の資産に対して行使できます(当該相続財産管理人に対し別途現地法による権限認証手続きが必要な場合はあります。)。

 更に、2021年の相続財産管理制度に関する民法改正がありました。
 以前、私も市民電話相談で「売れないし、税金だけかかるので、相続した土地の所有権放棄はできないのか、民法239条2項で所有者不在の土地は国庫に帰属すると書いてあるから、放棄できないか」と質問されたことがあります。
 しかし、一旦相続をしてしまえば、所有者不在となるような土地所有権の放棄はできません。
 「いくら民法の規定があろうとも、その手続きを定めた法律が存在しなければできません。行政手続はすべて法律に基づいて行わなければならないという法の支配の原則から無理です」と、私が相談者に答えると、面倒なんですねという感想を述べられたことがあります。
 面倒であろうとなかろうと、法律に基づく行政(行政手続きは法律に基づいて行わなければいけないこと。法律を行政の裁量権逸脱の抑止力と位置付けます。)は守られるべきで、手続法がないとできません。

 もっとも、相続人不在・不明の土地が社会的に増えたため、それに対応できる法制度として、2021年に相続制度の見直しが行われました。
 相続しても不動産を国庫に帰属させる唯一の制度であった、相続税の物納要件の厳しさと比較すれば、かなり前進した内容になっています。

 その中で、相続財産管理制度の積極的活用ができるようになりました。
 具体的に何が変わったかというと、918条2項が、基本的制度と位置づけられ、第3章 相続の効力 第1節 総則 の 897条の2に移動しました。
 また、897条の2ただし書が新設され、897条の2ただし書の反対解釈により、相続人が一人でかつ単純承認した場合や、遺産の全部分割がされた時や、相続財産清算人が選任された場合以外は、広く相続財産管理人が選任できると明示されました。
 
 つまり、日本でも必要があれば、相続財産管理人が広く選任することができると条文で明確になったのです。

 現行法の918条2項や、2023年施行の897条の2本文は「家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。」と規定します。
 この条項は、例えば海外に資産があり、相続法そのものは日本法が適用されるとしても、その手続法は現地法に委ねられる関係で、相続財産管理人の選任が必要であったという事案にも、利用できます。
 これを利用することの一番のメリットは、国内では戸籍制度の完備で相続人の範囲・特定が一義的に明確なのに、外国の裁判所や財産管理人に、日本の戸籍制度、財産状況を最初から、しかも外国語で説明しなければならない、大変面倒な手間が省略できることです。

 海外資産の相続で悩んでいる方は、現地の相続財産管理人を選任するのではなく、日本の裁判所に相続財産管理人を選任し、海外資産の相続手続を取ることを検討されるといいと思います。

 このサイトは、意図して日常業務に関連することは、極力話題にしないようにしていますが、財産管理制度という国際法とからむ問題のため、あえて話題にしました。家事に精通している渉外関係の弁護士は、多くないようです。

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