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時事問題 : 産業の空洞化と司法試験合格者数
投稿者 : admin 投稿日時: 2011-07-23 (1205 ヒット)
産業の空洞化が言われて久しいですが、再び1ドル=80円を切ることになり、電力不足による大変さに加え、先行きが心配です。

国内残業の空洞化は労働人口の需要の低下につながります。
既に海外シフトした会社では、海外より純利益、すなわち経営陣への「カネの流れ」があるとしても、社会全体に行き渡らせるような、大きな「カネの循環」を生じさせるものではないため、国内全体の産業構造が低下、喪失し、更には、国内消費構造が回っていかず、人が育たない環境になるわけです。

具体的に言えば、海外では1億円、国内では5000万円の純利益がでる同じ事業があるとすれば、会社の純利益は海外で事業をする方が得ですが、純利益を出すために必要な総事業費を10億円とすれば、それを、国内で生産する場合には、10億円のうち大きな割合を占める人件費部分は確実に国内に落とされ、「カネが循環」するのに対して、海外生産の場合には、海外に10億円が落とされるので、国内に回るカネは、純利益の1億円に限られるため、経済循環効果がなくなり、そのために、回るべきところにカネが回っていかないことになるわけです。
(企業には、1億円の利益ができる海外よりも国内にとどめさせるわけですから、魅力的人材の育成、その他海外にない付加価値を国内に用意する必要があります。)

我が国は、最低賃金法による最低賃金が高水準で維持されており、高い人件費の壁があるので、付加価値の高い工業製品の生産をする工場が、利益構造のある産業として国内に残っているというところだったのでしょうか。
原発で、農産物の輸出の急激な発展は期待できませんので、工業、サービス業の維持・発展は、国内の産業構造の保持のためには、本当は、至上命題にしなければならないはずです。

日本の工場は、高い人件費を、機械化でコストダウンを図ってきたわけですが、節電、電気料金の値上げは、結局、工場を直撃することになりました。
節電は、機械を十分に稼働できないことに、電気料金の値上げは人件費の代替であった部分の工賃のアップにつながります。
有望な国内産業の発展・維持がなければ「カネの循環」が維持・確保できない根本的な問題点を考慮すれば、正直、津波、地震の差し迫った危険のない地域の原発は、早めに稼働して、機械化を推し進めてきた我が国の工場体制を維持できる環境を確保し、海外シフトを阻止する必要はあるのではと思います。やはり、脱原発は、ソフトランディングを目指すべきです。

弁護士は、国内産業に大きく影響される職業で(渉外事務所も含め、日本企業の国内法関連の仕事が多いため)、国内産業、人口の健全な配置、育成とともに、発展維持できる業界だと考えています。マクロ的な危機感は、弁護士をしていると、リアルに感じます。

ところで、新司法試験の結果発表が9月8日に行われ、その頃前後から合格者の就職活動が始まります。既に弁護士会では来年度の合格者のための求人需要掘り起こしが始まっています。
今年の修習生の内定が現段階で約4〜5割程度とのことなので、今年も確実に弁護士事務所に就職しないまま弁護士になる人が増えることになります。関東以北は震災の影響があるので採用控えもあるようです。今年は2〜3割程度が弁護士・裁判官、検事として就職しないことになるのでしょうか。
これでは大卒の就職率90%よりも低いことになりますが、弁護士の場合には、新規需要がそうたくさんあるわけではないので、来年以降の就職は、もっと大変になると予想されます。

例年、採算度外視で新人採用をする事務所があり、また初年度から経費負担で弁護士事務所に入る人もいるのに(給料を貰うのではなく、最初は持ち出すことになる。)、就職率が7〜8割というのでは、大変な世の中になったと思います。
私は、就職率を上げるため、合格者を思いきって半分程度にしてもいいと思います。
国家財政難から、裁判官、検事も定員を減らすことはあっても、これ以上増やせません。
更に、修習期間が以前の2年から1年になったために、さしたるトレーニングを受けずに、裁判官、検察官、弁護士になっていく人も多いようです。1年分は、法曹になってから、トレーニングする他ないのですが、それでも、最低限の素養がなければ正直厳しいのかなと思います。
弁護士採用の選考基準は、相性、人柄、学歴と司法試験の成績、修習中の取り組み度により判断するのがオーソドックスなところですが、司法試験の成績が低すぎて就職できない実情が当然あるわけで、そうであれば最初から合格人数を減らす方が、余程受験生のためになるような気がします。
合格者は、せいぜい1000名前後にして、就職できない人数を1割程度に抑えるというのが、望ましいと考えます。
もちろん、合格者の減少により、司法試験そのものは、再び難易度が上がるかも知れませんが、民法の要件事実もまともに頭の中に入らずに法曹になっても、いいサービスの提供ができるとは思えませんので、法曹の質向上にはちょうどいいかと思います。

ちなみに、今、裁判所は、裁判期間の長期化を問題視して、「裁判官が足りない」キャンペーンをしていますが、これは無関係でしょう。
現場の立場からすれば、離婚事件その他ややこしい事件は、ドロドロとした生々しいものを、時が解決してくれることもあります。更に、離婚事件などは、時間をある程度かけて裁判をして、当事者に言いたいことを言わせないと、結果が出ても、消化不良のまま終わってしまいます。そうすると、結果に納得いかない当事者は、関係者を標的にした殺人事件に発展する世の中ですから、家事事件等、当事者が強いこだわりを持ちやすい事件においては、個人的には、ある程度しっかりやった方がいいのではないかと思います。

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