医師不足問題

投稿日時 2006-09-03 | カテゴリ: 時事問題

先日の新聞で、国立大学の医学部定員の増員が決定され、それが20年以上なかったことだとの報道がありました。

 今回の医師不足の話は、研修医の給与の国費支給が法制化されたことに端を発しました。
 ? 国費支給により事実上無償により研修医という医師を取り込めるようになった民間病院の思惑、? 研修受け入れ先・民間病院の充実・増加、? 研修先の増加によりの買い手市場から売り手市場になったことによる労働環境劣悪な大学病院の敬遠、? 大学病院医局所属の研修医の減少、? 医局の研修医減少に対応するため他病院に派遣されていた医局の医師の呼び戻し、? 大学の医局制度(ここでは、医局が提携する病院へ医師派遣をすることにより築かれた独特の体質を言っています)の崩壊、? 医局の医師を引き上げられたことにより、医局制度により安泰を得ていた地方病院の医師不足という連鎖の中で始まった話のように思えます。
・・・・狭い業界の出来事とはいえ、ここまでわかりやすく法改正の威力が短期的に社会現象として現れる例はないと思います。 
 これに加え、毎年医学部の卒業生でも、その後医師をやめてしまう人が多いため医師不足が生じたとも、最近の医療裁判の急増による医師の、医業に対する手控えがあるとも言われます。
 
 研修医の国費支給は、数年前に始まった制度ですが、それを参考にしたのが、我々法曹の卵である司法修習生(司法試験合格者)の給与水準でした。つまり、司法修習生の給与水準がこの程度であるから、この額にしようという法案が国会で通過し、法制化されました。
 国家財政難を理由に、その数年後、司法修習生の給与支払いは法案で廃止が決定されていますので、我々法曹は、「だしに使われて、しっぽを切られた」ようなものです。

 ま、ここで法曹と医師の待遇の違いを言っても仕方ありませんが(そもそも政治力に格段の差があるので。)、そろそろ、国費研修を終えた医師が続々と誕生するはずの時期に来るはずですが、こういう先生たちは、どちらに進まれるのでしょうね。
 経済効率で考えれば、研修医を受け入れた民間病院がそのまま研修医制度を継続させ、新しい研修医を受け入れるので、正規採用されなかった医師はどこか就職先を探すはずなのですが、この就職先が全国的にまんべんなく分布されれば、また違う形になるような気もします。

 ところで、医師が医業に対して慎重になるのは医業が疎かにされていない一つの表れでもあるので、これ自体は問題にすべきことではないと思います。
 慎重になりすぎる医師ばかりを、あるいは適性に疑問のある医師を作り出す医学部入試制度に問題はあるような気もしますが。

 法曹とよく比べられる他の国家資格として、関心を持ってその後の動向を見ています。

 




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