核家族化 第2世代の離婚について・・・・親子関係の構築

投稿日時 2007-02-05 | カテゴリ: 時事問題

1 最近の傾向

  戦後始まった核家族化の波は、核家族で育った子どもが親になる時期を迎えるまでになりました。核家族第2世代とでも言っておきましょう。

  さて、核家族第2世代の中には、離婚・死別により片親に育てられた子が親になっているケースがあります。
親から虐待を受けていた場合には、虐待の連鎖がみられる場合があるなどと言われますが、親が離婚していて子を持つに至った方の特徴は、
? 夫婦の間で何らかの亀裂が生じた場合に、すぐに離婚に話が流れる。離婚しやすい。
? 子がいても、子どもに対して執着が薄い。離婚後子どもとの交流が途絶える。
? 夫婦での子育てについて、知識欠如、認識欠如がある
の3点が上げられるのでしょうか。
(もちろん、これは傾向であり、全員に該当するわけではありません。)

  ?と?はリンクします。
  結婚生活がうまくいかないパターンは、すなわち、夫婦生活、日常生活のレベルにおいては、何ら問題ない場合であっても、自分の人生の中で、存在しなかった役割(男性だったら、父親にほとんど会っていないのに、父親の役割を求められる。母親だったら、父親がいない家庭で育ったのに、家庭での父の存在を受け入れ、子育てをしなければならない。)を求められ、しかし、もともと知らないから対応できないというケースです。
  あるいは、父親に育てられた娘が子どもを産んだはいいが、母親に代わる存在はなく(最近の晩婚化・高齢出産のため、育ててくれた祖母はとっくに他界しています。)、子どもに変わったことがあると思うと医者通いをするが、医者は医を売るだけで、子育ての伝授はしてくれず、子育てに支障がでるというケースもあります。

  ?は、離婚した片親との接触が自分もないから、離婚したら、そういうものだと思って、特別な理由がなくても、子どもとの接触自体をしなくなるのが典型的ケースでしょうか。


2 今までの離婚家族
  今までは、大家族の中に戻る、あるいは大家族でないにしても、母親であれば離婚したら親元に戻り、親の協力を得て、子どもを育てることができる状態にありました。
  昔は出産年齢が低く、50歳代で孫の面倒をみるのであれば、それほど大変ではなかったし、子どもも満足に成長したのかも知れません。

3 将来の見通し
  しかし、大学進学率が昔より大幅にアップし、社会にでる年齢が全体的に上がり、その分晩婚、高齢出産が増える傾向は、今後も続くと思われます。
  これは、高齢出産で生まれた子ども・孫を世話する祖母・祖父の年齢が上昇することを意味し、ますます、祖母・祖父が孫の面倒を看ることが困難になっていきます。場合によっては、親になった途端、育児と介護のダブルパンチということもあるでしょう。
  
  そのため、離婚した核家族は、代替を見つけることなく片親での家族を維持するか、あるいは、再婚を選択するかを、強く要求されることになります。
  前者の場合には、子どもはどちらかの親を知らず、またその親の役割というものを知らずに、育ちます。
  後者の場合には、その後再婚相手との実子ができようものなら家族内で微妙な関係に立たされ、また、再婚相手との間に子どもができないならできないで、頼るべき祖母が育児には全くの素人であてにならないため、本来当たり前にわかるはずの親子間で伝わるべき子育て知識の伝授がなく、出産子育ての際に大変な思いをする現実が待っています。

4 対策
  私は、こういう事態を避けるため、反面教師であれ、手本であれ、自分の親というものは如何なる人物であったのか、今後自分がどういう親になるべきかという考察の機会を付与するためにも、少なくとも、離婚後も、離婚し親権を手放した方の親との面会交渉を積極的に実現させるべきと考えます。
  片親不在で成長した子が、自分が親になってもうまく親子関係が築けるためにするために、すなわち、大げさですが未来の孫のためにも、離婚後の親子の面会交渉は積極的に行うべきだと考えます。

5 面会交渉の現実
  しかし、実際には、離婚するくらいなので、当然夫婦間にはわだかまりが残るケースの方が圧倒的で、親権・監護権を有する方が、離婚した相手の面会を拒絶するのは、日常的にみられます(憎しみ会って別れた相手にわずかでも接触したいとは考えませんね)。
  ささいな理由をつけて面会交渉を断るケースも実際には頻発しています。

  ただ、翻って考えると、これはずいぶん悲しい事態であり、今後の将来も見据えると、更にゆゆしき事態だと私は思います。

  離婚は珍しいことではなくなっている現状からすれば、今後将来確実に、面会交渉も満足なされることなく親を知らずに育つ子どもが増えるものと思われます。親を知らずに育った子どもは、「親がなくても子は育つ」と思いこみ、家庭崩壊を容易に選択し、離婚増加の悪循環を引き起こすのではないでしょうか(なお、ここでの離婚増加は、「家庭崩壊」の意味で使用しています。)

  面会交渉を実現させるには、当事者である父母はいやがっているのですから(別れるくらい嫌な相手なのだからこれは当たり前の話です。)、家庭裁判所の積極的な介入、主導が必要です。
  しかし、残念なことに、実際の裁判所は、役所の事なかれ主義よろしく、「お子さんが落ち着いてから」(最初に取り決められないものを後で実現できることは皆無!)「お子さんがおびえているから」(子どもは暗示性が高く、しょーもない親の悪口を吹き込めば少々おびえることもあるが、それだけで父親、母親に会わせる機会すら奪っていいのでしょうか。)で、何年も面会がされないことも、少なくありません。


  こういうことがありました。
  私が、妻側についた離婚事件で、相手方の夫は、親権を最初から放棄、面会も要求しないと言うのです。後でよくよく聞いたら、その人は、母子家庭に育ち、離婚後一度も父に会ったことがなかったそうです(これを聞くまでに一悶着ありましたが、ここでは触れません。)。
  その人はいいました。「俺は、親父の顔を知らない。プレゼントも貰ったことはない。けれど、母ちゃんが、親父から送られた誕生日プレゼントを俺に隠して捨てていると思って、生きてきた。」と。
  親からの愛情が薄ければ、子に与える愛情はどの程度になるのでしょうか。この人は、子どもに会わないまでもプレゼントを毎年贈るのでしょうか。プレゼントは子どもに渡されるのでしょうか。

  些細なことですが、子どもに別れた親からプレゼントが届くかどうかは、全て、周囲が子に対する配慮をどのように考えるかにかかってきます。

  何度も繰り返しますが、憎み別れた相手ですから、子どもは会わせたくないし、話しもしたくない、する話しは悪口しかないという別れた夫婦は多いのです。
  それでも、子どもに対して、相手親に対する配慮をすることは、周囲の働きかけがあって初めて実現されます。


6 お願い
  残念ながら、家庭裁判所の現在の運用は、育て親に比重を置きすぎているきらいがあり、面会実現の手段確保の役割を果たせていません。
  また、家庭裁判所は、家事だけでなく少年事件も扱うため、データの蓄積はあるはずなのですが、こと面会交渉の実現については、研究・検討がなされ積極的に対応するということを聞いたことがありません。はっきり言うと、面会を拒絶するだけの、その場しのぎの事なかれに徹していると思います(面会をノーとさせれば、面会を実現した際に発生するトラブルの可能性を完全に予防できるので、トラブルに裁判所が巻き込まれる可能性が皆無なため、裁判所にとっては、一番いい解決方法であるのも事実なのです。ただし、私の感想を言えば、数時間の面会時間の間にそういうトラブルの発生は全く考えられませんが。)。

  そこで、この記事をご覧になった方で、離婚後の面会についてご意見のある方、体験談などございましたら、当ホームページ記載のメールアドレスまで、ご意見をいただければ幸いです(なお、ご意見の際には、ウェブでの匿名公表の可否、性別、年齢、ご意見を記載下さい)。
  意見がある程度まとまった段階で、面会交渉についての掲示板を設け、皆さんと一緒に、「子どものための面会交渉のあり方」を考えみたいと思います。
  最終的には、ケース研究(家庭裁判所発行の雑誌)等への投稿も視野に入れ、裁判所の外から、面会交渉のあり方を変えて行ければと思います。・・・・まったくの草の根ですね。
  よろしくお願いします。




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