国家のデフォルト回避を真剣に考える・・その1医療産業の育成

投稿日時 2010-01-17 | カテゴリ: 時事問題

さて、現在の国家財政が泥船状態の、お先真っ暗となっていることを解説しました。
ただ、それだけでは何の解決にもならないので、気休め程度に、私なりの提案を。

国家財政基盤は主に税収に依拠しており、税収を増やすには、国民から税金を多く徴収すればいいのです。また支出を減らすのも一つの方向です。

現在、識者の中には、税収を上げるために、消費税を諸外国並に10%程度に上げるべきとの意見もあります。
逆に消費税を上げれば、景気が冷え込み法人税がかえって減るのではという意見もあります。

しかし、原則としては、やはり国内産業の活性化とそれによる税収アップを狙うのが、王道であることも間違いありません。
日本は人件費が高いので、他の面でのコストダウンを強力に推し進めなければ輸出産業としては育成されません。
したがって、今後成長産業として、期待できるものとしたら、今まで高コスト体質であった産業が狙い所かも知れません。

私的には、医療と農業ではないかと思っています。
1 医療を輸出産業(外国からの患者の医療収入があり、国内消費にとどまらないという意味で使っています。)にするために
 
 日本の理系トップクラスの多くは、医学部に進学する現状の中、明らかに市場は活性化してもいいはずなのに、市場原理が中途半端にしか働かない保健医療制度の中で、温室育ちが増え、国際競争力を失っていると思うのは、私だけでしょうか。
 また、現在でも労働人口は、長寿高齢者の医療費として毎月の健康保険料の中から20%程度負担している状況で(保険料徴収通知を確認すれば、長寿高齢者のために負担する保険料が記載されています。)、今後労働人口は減り、医療人口と直結する老齢人口の増大するため、今後確実に、健康保険料は値上げが見込まれます。下手すると保健医療制度は破綻となります。
 破綻回避のために、現在では、健康保険料滞納者に対して健康保険証を発行せず、事実上自費での受診を強いていますが、ベースとなる総医療費が今後増えるのが確実なので、これだけでは破綻は回避できません(本来であれば、こういう世帯を解消するために、保険料の軽減、そのために診療報酬の引き下げは欠かせないとも言えますが、今回は診療報酬が値上げされました。政治家は思惑で動くので、よくわかりません。)。

 そこで、私は、? 医療行為の一部除外・開放と、? 混合診療の容認、? 終末医療の一部保険撤廃、自費移行、? 自殺未遂常習者の自費移行を通し、率直に言えば、医療は、国内外の金持ちで儲けてもらって、一般国民に対しては、? 最終的には保険診療報酬の引き下げと、保険料及び負担率の現状維持(このままでは、確実に上がります。) を進めて欲しいと考えます。

 今、終末期医療のために、ICUが占領され、救命救急医療が十分に機能しない現状があります。
 また、高齢者が意味不明なほど大量の薬を処方される現状も無視できません。
 これは、全部、医療費として計上されているのですが、本当に必要なのでしょうか。薬の処方に関しては、医師から薬局に、もっと権限委譲して、本当に効率的な処方をすべきのような気がします。
 そうしたら、高齢者が薬を貰うために1分間の診療を受けて、薬代とは別に、健康保険料込みで総額5000円の診療報酬を支払う事態は回避できるはずなのです、制度上は。
 その上で、薬剤師の問診を充実させ、問題がある場合には、かかりつけ医の診察に誘導する程度に作り替える方が、余程、効率的でリーズナブルで、精神的時間的に忙しすぎる医業業務の改善になります。
 同様に、痰吸引行為など、日常頻繁に発生する行為で、いちいち医療関係者の到着を待っていられない病状緩和行為に関しては、早急に医療行為から外し、研修を義務づけた上で、介護施設職員でも可能なように法改正して貰いたいです。これに関しては、既得権益の固執としか思えないのですが、日医(日本医師会)の反対により実現していません。

 混合診療の容認は、自費(自由診療という制度は今でもあります。) に踏み出せない医療機関に、たとえば、丸山ワクチン (日本医大の丸山教授が開発した、30年くらい前に流通していた、ガンの進行を緩和する効用がある抗がん剤で、なかなか厚生省(当時)の保険認可が下りず、保険適用薬ではないが事実上、混合診療を容認された薬剤。) のように、はっきりとした効能はないとされるが、海外であるいは国内で緩和作用があるとされる薬がある場合には、「薬自体は高いが、高額な医療費の支払いを覚悟するのであれば使いましょう」 (その分、医療機関の儲けになりますね) という一部自費対応を促す、きっかけになります。
 混合診療の弊害として日医が主張する、「全ての国民に均一化された医療を実現できなくなる」というのは、実際、保険料不払い世帯への保険証の不発行により、現在でも実現できていないし(本来であれば、病気にかかる人は経済的弱者となるので、こういう人こそ救済すべきとも言えるはずなのですが。)、保険適用に値する薬剤、医療方法が開発されれば、それは従前通り厚生労働省の担当が適切に認可業務を行えば問題は回避されるはずですし、それはしなければなりません。
また、度が過ぎる程金持ち相手の診療しかしない医療機関に対しては、診療義務を規定した医師法を根拠に、コントロールする余地もあります。

 今topicalで、我々弁護士も頭の痛い問題として、終末期医療と医療同意の問題がありますが、この問題を後ろから後押しする制度として終末期医療行為の一部保険撤廃が考えられます。
 今の日本の医療技術は、胃ろう(咀嚼できなくなっても、切開して胃に直接高カロリーの栄養食を送り込むこと)などの方法により、高齢者が寝たきりの状態になり、意識がなくなっても、ICUで万全の看護をすれば、かなり長期にわたり生存可能です。
 そのため、終末医療は、医療費の中でもお金がかかる医療の一つとなっています。意識もなく呼吸をしている状態を継続させることがその人にとって幸せかどうかは不明ですが。
 ただ、胃ろうをするためには、体を切開する必要があり、本人の意識がない、あるいは認知症になっている等すれば、第三者が医療同意をしなければなりません。悩ましいのは、同意を求められた者は、図らずも当人の生殺与奪の選択の場面に直面してしまうのです。
 しかも、なまじ健康保険が使えるため、経済的理由は拒否の理由とはならず、「ただ生きているだけ」の状態を、残された者が望むかどうかにかかってしまいます。
 第三者であれば、尚更、複数人の利害を調整しなければならず、難しい決断を迫られます。せめて、経済的理由などあれば、逆に楽です。
 個人的には、身動きもできず、褥瘡の苦痛を我慢しながら生き長らえる気はありませんので、緩和ケア以外の終末期医療は受けたくないですが、それは、他人に強制できません。

 結論として、医療を輸出産業にするためには、もっと市場原理(健康保険制度という温床に浸かりきっている状態からの脱却)を取り入れなければ、国際競争力はつきません。
 それに伴い、現状よりも医療技術が発達すれば(私には、あまりの閉鎖業界のため、まだまだ口伝がまかり通っている世界のように思えます。)、十分輸出産業として耐えうるし、理系のトップクラスの多くが医師になる現状からすれば、もともと優秀な人材が揃っているはずだから、人材的にも問題ないはずなのです。
 
2 農業の輸出産業としての発展のために
  これについては、項を変えます。




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