フジテレビ・ニッポン放送の話

投稿日時 2005-08-16 | カテゴリ: 時事問題

大きく取り上げられているので今更言うことはありませんが、誰しも、「あれは何」という素朴な疑問があると思います。
ここまで騒動になった原因は、どこにあるのでしょうか。
1 日本では、あまり使われなかったけれど、アメリカのオーソドックスなM&Aの手法が、日本社会の代表選手のような不慣れな組織に降りかかり、騒動が大きくなった。

2 バブル崩壊後、欧米の金融工学その他、金融関係知識をやっきとなって取り入れようとしてきた我が国にあって、一般認識が大幅に欠如していた。

3 内部闘争には強いが、外部からの攻撃には弱いトップが右往左往した
 などが、考えられます。

新株発行差し止めだけが、耳目を引いていますが、一番注目すべきは彼らの使った、資金調達の手法、金融担保の考え方なのでしょう。法律家としてはどっちが勝かは比較的明確なのでしょうね。

私は、今回の件で、10年以上前に起こった、蛇の目ミシンの買収事件を思い出しましたが、あのときは、所詮、国内での話。現在は、グローバル化の中で、考えられない巨額資金が、M&Aに使われる可能性があるという意味で、ニッポンの浦島太郎状態が、露呈したのではないかと考えています。

数年前のアジアの金融恐慌を、対岸の火事とみていましたが、こうして、国内でも、かなりあっさりと、M&Aの実践だけが強みの会社に対して、巨額資金供与が行われる事実、巨額資金供与がロジカルな裏付けで・・・すなわち突発的出来事ではなく、普遍的に生じうるということに、ちょっと、驚異と警戒を感じました。

日本の古くてお堅い金融諸機関の融資の実態だけを前提にしていては到底出てこない発想です。
ま、日常業務で接する日本の金融機関とでは、武家社会と文明開化ほどの差があり、こういう積極融資、資金供与などあと15年くらいたたなければできないでしょう。

私は、金融商品の専門家ではなく、せいぜいその補強、事後処理を担当する法律家に過ぎませんが、どんな横文字を並べようと、問題になっているのは、「どういう条件で、融資をするのか、その基準としてどういうテーゼ、リスク評価、基準を設けるのか」あるいは裏返すと「どういう条件で、募集をするのか、それに対して、どういうリスクを想定するのか、客に対して、どういう説明をするのか」ということです。・・・・資金供与をする側においても、資金調達と供与の二面性があるのです。

アメリカでこういうことをやっているからそれでいいというのではなく、今後の検討課題は、我が国における、そういう手法におけるリスク評価でしょうが、今回の件は、Lehmanは、世論の反応をみて、フジテレビの買収までは動かさないでしょう。
しかし、今後、世情が変わり、世の中がもっとアメリカナイズされたら、こういうことは、必ず起こり、次はもっと大がかりになっているのでしょう。蛇の目ミシン事件から、grade upしてフジテレビ問題が今あるように。

欧米人は、予言が好きです。ノーベル賞の受賞理由をみても明らかなとおり、事実の確認、実証より、脳の思考としての結果の発見を、尊びます。日本人、おそらくアジア人とは違う発想で動いています。欧米発想のリスク管理・評価をそのまま日本経済に取り入れるのは不可能でしょうが、融資は、欧米の金融から彼らの基準で実際にCashとして流れてきます。よくも悪くも。

これを防ぐには、欧米の基準が必ずしも当てはまらないというリスクに関する研究成果をだせるかどうかです。難しい問題ですが、日本の金融屋諸方にもがんばってほしいものです。

話はそれますが、金融商品被害の事件も扱う弁護士としては、証券会社、銀行が、そこら辺の研鑽を積んで、決して「ニッポンの消費者が詐欺に遭うような金融商品」を「新しい商品ができた」と勘違いして、大々的に消費者に損をさせるのではなく、全体としてニッポンが富むような金融商品の開発、使い方をしてほしいと思います。そのくらい、実践と研鑽を積んで頂きたいのですがね。

と、念のため言っておきますが、金融商品の発想は、確率統計学をベースにした金融工学から成り立っています。確率統計は、ギャンブルから発展しました。金融商品、先物取引は、ギャンブルです。やる前に、肝に銘じて下さい。

「絶対に儲かる金融商品がある」「安全だ」「分散投資して儲けませんか」などという勧誘文句は、疑って下さい。「分散投資」とは、金持ちが、金余りにまかせてするリスクを伴う投資であり、庶民のやることではありません。元手の桁が違います。




海田麻子法律事務所にて更に多くのニュース記事をよむことができます
https://www.kaida.org

このニュース記事が掲載されているURL:
https://www.kaida.org/modules/weblog/index.php?page=article&storyid=7