今後の復興計画について その1 物的計画

投稿日時 2011-03-21 | カテゴリ: 時事問題

復興計画というと、ハコモノ建設というイメージが大きいようですが、復興計画は、人的な計画(精神的ケア、人的育成、回復)と物的な計画(ハコモノ)があります。
 物的計画と人的計画にわけて、述べていきたいと思います。

1 物的計画・・・・

 逆説的なことですが、今回の復興は10年程度の長期計画を立てることが、必ず必要です。
 仙台周辺はともかく、他の漁村、市町村では、漁業で生計を立てているわけで、しかも養殖であれば、回復に何年もかかります。回復までの間は、基幹産業に代わる公共事業は、地域住民の貴重な収入源となります。
 長期間の公共事業の存在は、自分たちの力で回復することでノウハウを含めた復興力をつけることにつながり、また、基幹産業が回復しなくても生計を維持できることになります。
 早い復興が求められると言っても、復興だけは、言葉どおり物理的に「1日も早い復興」だけが必要なわけではありません。
 
 神戸の場合には、市街地の道路の復旧は、町ごとにゼネコンに道路舗装を発注し、相当早くやりました。瓦礫撤去も早くやりました。
 が、早すぎて、地元業者が入り込む余地がなく、破綻した事業者もありました。
 更に、道路舗装などの公共事業は、劣化により復旧作業として公共工事をするようになっています。一斉に町中を舗装すれば、また公共設備が一新されれば、相当年数公共事業が減少します。これでは、地元の土建会社が成り立ちません。
 一斉整備は、一長一短なのです。都市型大震災であった神戸の例を、漁業の町にそのまま持ってくることはできません。

 では、どこまでを早く対応するのか。
 私は、建物撤去、土地の再線引き、復興計画設定(変更を予定しないもの)は早く対応する必要があると考えます。
 
 今回の大津波では、神戸の場合と違い、自分の敷地と無関係に流されてしまい、ごちゃごちゃになった瓦礫等の廃材の撤去の問題と境界確認、地盤沈下により陸の部分が狭くなった市街地の有効活用の問題が生じると思われます。
 
 瓦礫の撤去は、本来であれば個人の責任ですが、誰のものかわからなくなっているのですから、誰も文句が出ないやり方としては、行政が一括して撤去をするしかないのでしょう。
撤去したものについて、自動車、鉄材とその他を分別した上で、市町村内若しくはその近郊に一次的に保管し、信頼のおける人員(盗難、不平対策のため)を配置して一定期間、遺品探し、貴重品探しをする方法しかないと思います。

 ただ、現在の法律では、行政による、このような一体管理はできません。
 あるとすれば、都市計画法に基づく土地収用(若しくは土地収用法の直接適用)と、それに基づく解体処分権限による解体が考えられます。
 が、一時的であっても土地収用すると莫大な費用がかかるので、難しいでしょうかね。市町村が指定する特定地域内の建物についての解体処分権限を認める法律を制定する方が早いかも知れません。
 
 今回の地震により、牡鹿半島が東に5m動いたとのことであり、土地の変化が予測されますし、水没した土地が存在することにより、利用できない土地が生じました。
水没した土地を盛り土して、グラウンドとして使用するとしても、今後を考えれば、居住に耐えうる建物を建築することは難しいと思われます。
 また、かなりの箇所で、土地境界が不鮮明、不明瞭になっていると思われ、今後のトラブルを避けるためにも、都市計画に基づき、区画整理(区画整理法の適用と換地の実施)を実施し、再線引きするのが望ましいです。

 瓦礫撤去と土地境界の再確認をすること、すなわち、一時的な公用収用、新たな市街化計画の策定、区画整理法の適用と換地の実施は、今後のトラブルを避けるためには必要と思われます。

 
 なお、今回の被災の教訓として、復興する町ごとに、浜側に岩盤まで杭打ちをする高層建物を建築し、緊急避難建物とし、地域住民の今後の安心の拠り所とするのは、必要と思われます。
 この避難建物は、広い階段を設置する等、津波に対応できるものとし、また、小さいながらもある程度戸数を確保した独立型簡易宿泊施設と、行政が使用できる最低限の部屋が確保されると望ましいのですが。
 ゼネコンが手伝うべきものは、海岸部の頑強な高層建物の建築であり、それ以外は主役を地元とし、黒子に徹する必要があります。




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