オーストリアの大手教科書出版社の教科書に、日本海に「東海」の併記を決定

投稿日時 2012-06-28 | カテゴリ: 時事問題

またまた、日本海の呼称の問題が浮上しました。オーストリアで使用する教科書に、日本海と東海を併記するというものです。
韓国の東海運動による誤った結果(成果?)と言えます。

朝鮮半島では、朝鮮半島西側の海域である「黄海」を西海、東側の海域である「日本海」を東海と言っているようですが、西海表記については敢えて運動をしません。ヨーロッパにとっては、ヨーロッパの方が西なのだから、「西海」の表記活動をしても、簡単に受け入れられるものではないし、自分たちが東の海(日本海)を東海、西の海(黄海)を西海と呼んでいるからと言って、彼らの中華思想を世界に認めさせることはできないことをわかっているからです。

ヨーロッパにとっては、自分たちの西に対して、確かに極東の海域の海は、「東海」とするのが簡単で分かりやすいこともあり、「東海」併記推奨ということになったのでしょう。
また、たとえば、子どもの試験レベルでは、日本海という表記よりも、「極東にある海域。だから、東海」の方が回答にたどり着きやすく、便宜的だがわかりやすい表記なのかも知れません。もともとほとんど縁がなく、「東にあるから東海」という発想は、海に面していない遥か彼方のヨーロッパの国にとっては、定着性があり、教育のためには、推奨したいというのでしょうかね。
その教育効果にどれほどの意味があるかはわかりませんが、所詮、最果ての地、無縁といえば無縁で、どうでもいいことではあるでしょう。

しかし、日本海はその多くが、日本のEEZラインの中にあり、日本列島の方が日本海に接している海岸距離も長いのです。更には、この海域は、北から「オホーツク海」「日本海」「東シナ海」「南シナ海」「インド洋」と呼称が変わりますが、ネーミング的にも、歴史的には、「東」の海であるのは、朝鮮半島だけなのです。
にもかかわらず、併記というのは、あまりにその土地に住んでいる人に配慮せず、世界観のない、教育なのではないでしょうか。

この日本海と東海の違いは、オーストリア的に音楽に例えれば、クラリネットの表記として、「クラリネット=バスクラリネット」と表記するようなものです。バスクラは、クラリネットに分類されますが、同じではありません。

日本に住んでいる日本人としては、この記事を読むと、「オーストリアは、どういう思想で教育をするのか」と問いただしたくなりますが、いっそのこと、「オホーツク海」も「日本海」「東シナ海」も「南シナ海」の全部「東海」にすれば、もっと、簡単でいいかも知れません。その土地の地理、歴史を全く無視して、わかりやすい表記に徹底するのであれば。

海に面していない、しかもはるかかなたの国ですから、この方が、自国(試験を受ける自国の子どもたち)の利益に合致する一面もありますが、これでは、国際性は生まれず、東アジアの正しい理解もできません。

もちろん、日本人としても、反省すべき点として、最初に日本海問題が生じた際に、想定外のことなので驚くだけで、世界に対して正確な理解を求めることをして来なかったこともあるかも知れません。
朝鮮半島と日本は、もともと民族的にも近く、日本人のルーツの一つが朝鮮半島から移住した人々の子孫であることは紛れもない事実です。
韓国や北朝鮮は、近年、1500年以上その使用に歴史があった漢字表記を捨て、1400年ころに発案されたハングル文字のみでの表記(但し音はそのまま)だけにしてしまう国ではあります。日本人の私にしてみたら、今までの古文書を全部捨てさるつもりか、という驚きを覚え、理解に苦しむものですが、韓国は、つまりそういう国です。
そのため、世界的に有名な韓国の海印寺にある漢字で書かれた「八萬大蔵経」は、韓国の若い世代にしてみたら、全く読めない書物と化したわけですし、あと100年もすれば、韓国内の古文書(漢字表記)、ヨーロッパで言うところのラテン語の文献と同程度の扱いとなってしまうでしょう。韓国ではこういう危惧感、歴史の承継については、全く話題にもなっていないようですが。

延々と続く歴史的文字である漢字も捨て、古文書も事実上解読不能とさせる国に、歴史による正当性を語ってほしくないし(ただし、正直韓国のいう、東海表記の歴史的正当性根拠が、真実、根拠足りうるのかも、疑問です。)、地理的条件、海域の利用状況、ここ150年の海域の名称実績を無視したこういう主張をまかり通らせてはいけません。

オーストリアは、距離的、歴史的にも相当離れ、音楽、貿易、観光以外はほぼ縁がない国ではあります。しかし、せっかく、東アジアのことを教育するのであれば、その地域の歴史、生活、地理的な意味合いをもう少し、尊重してもらってもいいのではないかと希望します。

東アジアの地図をさかさまにして、日本海を見れば、日本列島で取り囲むように、この海域があることがよくわかります。韓国が主張する東海は、朝鮮半島の東の近海の呼称というのが、正しいのです。
「日本海」は、「東海」ではありません。


*韓国の漢字問題についての補足
韓国、北朝鮮が、漢字を手放したのは、近年のことなので(日本国内の事情で言えば、昭和50年代までは、韓国・朝鮮人のための案内板は、日本語のように漢字まじりのハングル表記だったと記憶しています。)、現在でもハングルだけではなく、漢字表記を復活させようという韓国内の動きがまったくないわけではありません。

ただ、この活動を難しくしているのが、戻すべき適切な漢字表記がないということです。
現在、漢字を使用している国は、中国、台湾、日本で、漢字が発明されてから3000年(日本にわたって2000年)以上経過し、それぞれの国で使用している表記若干異なってきています。「切手」等、最近使われだした単語には共通性はないようですが、ある程度筆談ができます。
一番簡略化した漢字が、中国の漢字、一番変化がないのが台湾の漢字で、日本の漢字はその中間という感じでしょうか。文字によっては略語化の程度に差がありますが。
日本はかな文字という、起源を平安時代(800年ころ)とする文字があり、漢字まじりのかなを使うので、中でも独自的発達を遂げています。
日本語の表記はかな交じりの漢字が正式なものです。これに対して、ハングルは、その文字数が多く、単一音をそのまま表記しているわけではないので、ハングルだけでも用は足りると漢字の使用を廃止してしまったわけです。日本でいえばかなだけの表記になったということになります。
しかし、もともと漢字は表音だけでなく表意文字であるため、結論的には、漢字排斥により表記そのものの多様性がなくなり、漢字から表音文字であるハングルは特定できるが、ハングルという表音文字から漢字が特定できないため、結局、漢文が全部解読不能文字と化してしまうのです。

韓国が漢字を復活させる場合、どの漢字を使用すべきかという問題が生じますが、日本の漢字を利用すれば「統治下」に戻るのかという国内批判が生じ、台湾、中国の文字を使用するには、理由がないということになるのでしょう。李氏朝鮮下の漢字に戻すこともありますが、韓国と李氏朝鮮では、国が違うわけで、これも決め手になりません。そのため、戻すに戻せない難しい状態に陥っているともいえます。
日本語と韓国語は、音だけとれば、「危険」「家族」など共通する意味と音を持つ言葉も多く(中国語、台湾語より圧倒的に多く、韓流ドラマを見ていると、面白いところで音が同じと感心します。)残念という気がします。
結局のところは、漢字復活問題は、大局を見て、こだわりを捨てるほどの必要性があると判断できるかどうかなのかも知れません。

ちなみに3.11の時に、1100年前の「869年の貞観の大地震の記録をもっと活用できていれば、大変無念だ」というコメントをしている学者、研究者がおられました。
このころの公文書の表記は全部漢文で、言語の断絶があったらとても解読できなかったでしょう。
確か、3.11の前年2010年ころに、「東北の武士の書いた文献が見つかった。そこには現在の高さで15メートルの高さの津波が押し寄せたと記録があった。15メートルは、大げさかもしれないが、参考になる」というような内容の新聞記事があったと記憶しています。同じ地震を指すのではないかも知れませんが。

いずれにせよ、目覚ましく科学技術が発達し、生活スタイルも全く変わってしまいましたが、それでも数千年の間に集積された知識、見聞、歴史は、時として未来を予測する重要な手がかりとなり、また生活の知恵となり、アイデンティティーに直結するものとなります。先進技術だけでは物足りない何かを補ってくれるもので、過去を紐解くツールである漢字は、日本人にとっては必須アイテムです。




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