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投稿者 : admin 投稿日時: 2008-02-10 (3067 ヒット)
さて、私は、弁護士の激増には反対と書きましたが、そういうことを書くと、「弁護士業界は現代のギルドであり、閉鎖的職業の専横」と言われますので、弁護士増加を前向きに捉えて(年間3000人増員しなくても、年間1500人の増員は決定的なので)、弁護士が増員されることによる、弁護士のメリットについて触れたいと思います。 

弁護士側からするところのメリットとしては、弁護士会としての組織力が格段についたため、地方行政のみならず、国家行政にも大きな影響力を持つことになることです。
 もともと、弁護士は顧客層が幅広く、支持母体が多岐にわたるので、産業界のように金の力にものを言わせられなくとも、票動員力はあったのですが、自らが巨大組織となることで、組織そのもので主体的に行動できるようになりました。

 また、弁護士業が一生の職業でなくなったために、弁護士経験を生かして、多方面特に政治家などへの転身が広く行えるようになったことも特色かもしれません。
 近年の弁護士出身の国家元首の多さも、弁護士の多方面への活躍の可能性を裏付けるものです。
 韓国の前大統領、イギリスのブレア元首相(正確には国家元首は女王でしょうが。)、アメリカのクリントン大統領、アメリカ民主党のオバマ、クリントン両候補も、皆さん弁護士出身です。
 ちなみに、クリントン候補は、弁護士時代医療過誤を専門にされていたとか。それで、今回の「国民皆保険」の公約がでてきているのかも知れませんね。
 (アメリカでは、現在、日本のような健康保険制度がなく、救急外来の診察のみが無料で、救急外来(ER)制度の破綻が社会問題になっているようですが。)

 弁護士の業務は、企業相手の企業法務だけでは、企業のことしかわかりませんが、一般市民相手の業務の場合には、今までの自分の生活では体験しない、およそ接触しない人々と直接話しをしたりする機会を持つことで、多様な社会層と直接接することになり、国家や地方行政をどうあるべきか、すべきかを考えてしまう、そんな職業です。
 つまり、言ってみれば、市民相手の弁護士など、法律の限界を日々、感じ、また自分の仕事の限界を感じ、「こう法律を変えれば」「こう法律を変えて、こういう方向に持って行って欲しい」と考えてしまいます。
 利権が絡まない分政治家より、またしがらみがない分、役人より、ずっと率直に、国家、地方行政を考えざるを得ない職業なわけです(もちろん、それで誰もが政治家を志すわけではありませんが)。

 こういうことは、今までの、例えば、私が弁護士になった頃の1万2000人体制で、他国と同様に弁護士が政界に進出できたかというと、それは否でしょう。仕事が多すぎ、辞める選択がありませんので。
 だから、現在の弁護士3万人体制が悪いとは思いません。

 なお、一般に、批判される「2割司法」、つまり人口の2割しか弁護士がおらず、他国に比べて、極端に司法サービスが劣っているという批判には、根底において、大きな誤りがあります。
 そもそも、日本には、法律に携わる業種として、弁護士、税理士、司法書士、行政書士がいますが、これ全て、他の諸外国では、「弁護士」が行います。
 したがって、「弁護士の職務領域の就業人口」の比較でいえば、日本は他国にひけをとらない人口(一説には多いという話しもあります)を抱えています。
 行政書士、司法書士、弁理士、税理士などは、そもそも、弁護士の人口が少ないことを背景に資格制度が始まった面が多分にあり、その意味では、いずれ資格を弁護士資格に一本化する統合論が出てくることになるのでしょう。
 
 ただ、現実には、これらの士業も諸外国では弁護士しかやらない業務をやっているのは事実ですから、諸外国との弁護士人口の比較は、「弁護士の職務領域の就業人口」で比較するのが、正しい比較であり、そうであれば、2割司法という批判は、全く該たりません。

投稿者 : admin 投稿日時: 2008-02-10 (1829 ヒット)
2月8日に日弁連選挙がありました。
日弁連とは、日本弁護士連合会のことで、弁護士であれば、大学教授あがりの弁護士だろうと(今はもうこの制度は廃止されましたが)、裁判官、検事あがりの弁護士だろうと、全員強制加入しなければいけない組織です。
私が弁護士になった12年前は、弁護士の数は1万2000人程度だった気がしますが、今や全国3万人に届くのが目前となりました。そろそろ3倍ですかね。すぐに4倍、5倍になるそうですが。
司法書士、土地家屋調査士など他士業の人数とは、比較にならない程増え、いずれ税理士の人数に匹敵する、一大組織・意見・政策集団となるのは確実です。
 弁護士は、増えた方がいいのか、そのままでいいのか。難しい問題です。

ただ一つ言えることは、弁護士会としては、数のパワーが確実に増すという意味で、増員は望ましいことではあるのは間違いありません。一士業の選挙結果が、写真入りで新聞記事になった例は、他に例を見ないし、日弁連選挙でも今までほとんどなかったのではないでしょうか。
個々の弁護士としては、いろいろ意見はあるでしょうが、企業法務を主としてやっている弁護士(今回選出の弁護士がどういう経歴をお持ちかは自ずとわかるでしょうが)には、数のパワーという魅力は捨てがたいでしょう。
一人の弁護士が支払う弁護士会費(単位会、連合会会費を含む)は最低でも年間約50万円、3万人いれば、ざっと150億円。毎年すごい予算が動きます。増員は、予算激増の強力確実な手段です。

 こういうところは、開業医が中核を占める日本医師会とは、性格を異にします。 

 さて、私は、「弁護士は増員すべき」というこのような新聞の意見は真摯に受け止めるべきだと思います。
 しかし、この筆者は、以下のとおり6つ根拠をあげますが、これは理由として適切ではありません。これについて、実際を細かく検討していきたいと思います。

増員理由1 230ある地方裁判所、支部の管轄地域で、弁護士事務所が3以下のところが、90カ所近くある。

 確かに、こういう統計データが出ています。
 しかし、近年市町村の統合合併などで、ずいぶん市町村数は減りましたが、裁判所の支部はほとんど減っていません。
 最近は、過疎が進行し、高齢者が大半を占め、集落の消滅が危惧される、限界集落の問題が話題に上がっていますが、支部の多くは限界集落を抱えています。地方の人口全体も確実に減少傾向にあり、人口が減ると言うことは、人と人とのトラブルも減り、調整弁としての弁護士のニーズも減るのです。
 また、今でこそ、都市部では弁護士がトラブルの調整弁としての役割を期待されるようになりましたが、地方の支部で、どの程度、弁護士が介入すべきトラブルがあるのでしょうか。
私の経験によれば、支部の方が「町・村のことは村・町で解決」「よそ者(その町村出身ではない弁護士)は口を出すな」パターンが多いと感じましたが、そんなに、よそ者に頼るニーズが出ているのでしょうか。
 この統計は、よそ者(弁護士)に調整弁を期待しない地方の特殊性を反映しているものではありません。また、限界集落、過疎を多く抱え、ニーズが減ることはあっても増えることはない支部の特殊性を殊更、無視しています。
  
増員理由その2 法テラスの弁護士の人数が足りない

増員理由その3 法律扶助事業をするのは全弁護士の4割未満

 そもそも扶助事業は、法テラス専属ではない一般の弁護士もやっています。
 私は、法律扶助の事件もやっていますが、事件件数が極端に多い東京でも、法律扶助の事件のなり手がいないということは実際にはありません。
 法律扶助は、一部国費による事業で、「勝訴の見込み」が扶助の条件のため、希望者全員が受けられるわけではありませんが、これは、かの国以上に訴訟社会にしないためには(かの国でも、あらゆる訴えに扶助が受けられるわけではなかったはずです。)、勝ち負けにかかわらず訴訟が乱立する状況になることを阻止するために、必要なことです。
 また、新人の法テラスの人数が少ないのは、設立間もないので養成体制がないこと、養成後のバックアップ体制がないことも影響しています。法テラスは、国の機関でありながら、そこで働く弁護士は、公務員ではありませんし、出向している検事とは歴然とした待遇差があり、弁護士の公益活動たるはずの弁護士会の活動が有給休暇でやるなど、本末転倒な処遇がされています。
 弁護士の場合には、公益活動は既に義務化されている時代に、誰が考えたのか知りませんが、「仕事だけこなせ」では、いくら何でも、人は集まりません。
 ですから、この数字・評価には、法テラスの実態や応募が少ない理由が一切無視されていること、扶助事業のニーズを無視し、短絡的に全弁護士の4割未満しか扶助事業に携わっていないから、司法需要を満たしていないとする点で、誤りがあります。

増員理由その4 国選弁護を担当するのは、全体の半分強

増員理由その5 今後、刑事弁護の比重が増すから心配。

 現在東京では、国選弁護のなり手が多く、回数制限(一人の弁護士が受任できる数を制限しようとするもの)が議論に上がっています。仮に、国選弁護を担当したのが、全弁護士の半分強だった年があるとしても、国選事件がなければそもそも国選弁護事件を担当しようもないわけですから、「国選弁護を担当するのは、全体の半分強」という統計の数字は、何の意味もありません。
 「今後、刑事弁護の比重が増すからこれでは心配」に至っては、全く納得いきません。この社説の筆者は、裁判員制度の利用があった国選弁護であったとしても、受任するのは原則1名の弁護士で、国選報酬は、所要時間で割れば時給1万円いけばいい方で、さっきも書いたように国選弁護には受任制限があるので(だいたい多い人で年間10件程度。但し、地方は、それなりに多い。)、東京では国選で年間70万円くらい貰えれば多い方であることを理解しているのでしょうか。
 今回の裁判員制度の導入で、多額の国費が動きますが、裁判員制度は弁護士に特に予算を組んではいないようです。
 取り調べの可視化が期待できるなど、手続面での進歩がいわれているだけです。
 しかし、先に書いたように、国選弁護を受任する体制は実際にはありますので、裁判員制度が弁護士が原因で機能しないことはないと思われます。

6 単価の安い仕事をやりたがらないだけ。

 これは、実際には、ないですね。そもそも、国選弁護の単価は安いし、法律扶助も単価はかなり安いですが、受任弁護士は存在します。

 誤っている前提で、「弁護士は多すぎない」と論じられても、それは議論ではありません。新聞の記事なわけですから、きちんと調査の上、「弁護士は多すぎない」と論じて欲しいものです。


 今後、日本が国際的に国際社会にとけ込み、また、国内的にも多民族社会になるためには(いいかどうかは議論があるのでしょうが、人口減少時代には移民受け入れで対応するのが諸外国の例です。)、グローバルスタンダードの調整役としての弁護士が必要であるのは明らかです。
 
 今までの「おらが村のお偉いさん」がトラブルを解決したでは、国際的には誰も納得はしないでしょう。ただ、その適正人数については、このまま、激増が妥当なのか疑問です。


 ところで、アメリカ帰りの方などは、日本の、東京の弁護士の感覚では、弁護士同士の話し合いで解決なりするものも、いちいち裁判を起こします。いちいち裁判が起きても、弁護士が少なければ対応できませんから、やはりそういう世の中では、弁護士が多い方がいいに決まっています。

 映画「フィラデルフィア」ではないですが、日本も、アメリカ並みに、何でも裁判をする世の中になる日は、遠くない未来に確実に到来します。

 
 ちなみに、アメリカの弁護費用は、日本の倍以上のようです。弁護士の数が多い(アメリカは弁護士人数×時間×料金で算出される時間制料金なので、無駄であっても多い人数が張り付いた方が多く料金を請求できる)からとも言われていますが。アメリカ並みになるのですから、仕方ないですね。

投稿者 : admin 投稿日時: 2007-08-20 (1063 ヒット)
 さて、大地震が起きました。その時、あなたは何をしますか。

私が見たところ、3つのパターンがあったようです。1 それまで継続していた日常生活を続行する、2 非常時に応じた対応をする、3 起こった出来事に呆然として、何もしない、あるいは、できない の3つです。

1 は、例えば、井伏鱒二の小説「黒い雨」の中で、市電に乗り合わせた女性が、原爆投下直後というのに、今日やらねばならない仕事があると言って、爆心地に出向くようなのが典型例です。私も、震災当日、動かない電車の線路をスーツ姿で、鞄を持って歩いていく人を見かけました。とりあえず、出勤しようとした人は、少なからずいました。

次に、2ですが、地震直後より、近所の学校などに避難する、近所の救助にあたるというケースです。当時の神戸には、関東のように、広域、一時を問わず避難場所の指定はありませんでしたが、それでも、近所の学校に人が詰めかけました。
 なお、引火の処理をちゃんとせずに避難を先行させると、延焼が拡大するのは、この前指摘したとおりです。

最後の3は、あまりのことに放心状態になっているわけですが、ともすれば、人はこうなります。

 日頃、2の行動をと言われていますが、思ったより、全然できません。事前の準備と心づもりが必要です。

 
では、警察や消防、行政は何をしていたのか。
 
警察は、交番のお巡りさんは地域巡回をしており、被害の状況を知らせていました。後で聞いたところによると、警察では、地域巡回の他は、大量に運び込まれる、死体検案で大変だったそうです(地震の死者は、病死でないため、原則として行政解剖を行った上で、死亡証明書の発行を受けなければ、火葬できないため。)。
 
消防は、道ががれきでふさがれる、道路が波打っていて通行できないなどで、道路事情が悪かったこともあり、また火事の数が当日、はんぱでなかったせいもあり、当日、消防車の出動は、近所では、ありませんでした。
 
行政は、避難所になった学校への水、電気、電話のライフラインの早期復旧(ガスは遅かった。)、一括ではなく、区画ごとに細分化してゼネコンに道路整備を発注し、早急に道路の復旧を実現し、建物が倒壊したがれきの山の撤去を進めるため、素早い補助金の決定と倒壊診断の実施をしたことなどがあげられるのでしょうか。
 
ちなみに、裁判所も検察庁もすぐに業務は再開しましたが、民事裁判は当事者が出席できないなどの事情があり、すぐには再開されませんでした。

 一市民として、公共サービスに不満がないわけではありませんが、みんながやれることを、やっていたわけで、これについて、文句を言うことはできません。

 
 阪神大震災以降、大地震の被災地には義援金や援助物資の募集が当たり前のように受け付けられ、それとともに、行政主体でボランティアの受け入れ、炊き出しなどが当たり前のように行われることになりました。
 阪神大震災を教訓として、更に一歩進んだ、非常時に則った、あるべき非常時の行政の姿を、再考してもらえればと願っています。

 最近、ある自治体が作成したマンション向けの防災パンフレットを読みました。
 読んだ人が不安を持たないよう細心の配慮がなされた内容で、ある意味、それは功を奏していましたし、それに批判を加えるつもりはありません。 
 しかし、水道が復旧しないため、水くみに、キャリーカートに積んだポリタンクで(水を入れるとポリタンク2つで、5、6キロになるでしょうか。) 往復しなければならず、電気の復旧、エレベータの復旧まで階段で持ち上げなければいけないとか、それができない人は、マンション暮らしができなかったとか (・・・とすら、はっきり書かれていませんでしたが)、だけではないのではないでしょうかね。
 せめて、停電になって警報装置が作動しない場合には、自治会が率先して各戸を周り、異常がないか確認するとか、マンションだからとさっさと火事も放置して避難所に行っては駄目だとか、最低限必要な、実践的なアドバイスは、挙げればたくさんあるはずですが。


 神戸の震災は、実際には、その地形の特殊性もあり、西神、概ね阪急から北の六甲山麓、阪急からJRまで、JR以南、埋め立て地の臨海部のマンション群ではそれぞれ被害の程度、傾向も異なりました。
 また、木造戸建て、コンクリート建物でも被害が異なり、一口には語れません。
 震災から10年以上経過した今、事実を事実として受け止めて、客観的事実分析の下に、あの惨事の教訓をこれからに生かす必要が、全国的にあると思います。そろそろ周期と言われて久しい東海、南海も含め、備えるべき地域は結構あるはずです。

投稿者 : admin 投稿日時: 2007-08-17 (1776 ヒット)
さて、建物倒壊と言えば、全壊、半壊、一部損壊の3つにより、分類されますが、全壊には程度があり、木造建物の場合では、次の分類が正確ではないかと考えます。
1 柱が崩れ(なくなり)、小屋組の痕跡もなく、屋根があるもの
2 柱が崩れ、各階の床から梁まで空間が確保されていないが、母屋から上の小屋組、屋根は存在するもの。
3 柱はゆがんでいるが、完全に倒れておらず、各階の梁までの空間が確保されているもの
4 建物自体は一見すると損害がないように見えるが、傾斜地などにあり、法面の崩壊があり、基礎が露出し、基礎部分が一部崩壊しているもの
・ ・・・・以上、すべて全壊建物になり、建物再築の必要があります。

しかし、中に入っている人の生存の程度には差があります。
1、2は、建物崩壊による、圧死の危険がありますが、3,4では、建物崩壊による圧死の危険はより少なくなります。仮に、全壊建物となっても、できれば、1,2の状態を回避しなければなりません。

3,4で、圧死で死亡するケースは、積み上げていた重い物が頭上に落下したとか、家具が倒れてきたなど、室内家具が原因での圧死が考えられます。
2段に分かれるタンスも、強い縦揺れにより、上段が外れて落ちます。一体型のタンスの場合には、タンスが斜めに倒れてくるだけなので、タンスの全重量が落下点にかかることはありません。しかし、2段に分かれるタンスの上段が外れると、タンスの全重量が落下点にかかるばかりか、左右どちらかの角が先に落下すれば、一点にかかる重量は、より大きくなり、結構衝撃がありますから要注意です。タンスは中に物が入っていると更に重いですから、二段式に分かれるタンスの横に寝ること、一体型タンスであっても、タンスの高さより部屋の幅が広い(狭かったら、タンスが壁にぶつかり、空間を作るからタンスと体がぶつからない。) 部屋でタンスの近くで寝ることは、避けたいところです。

たまには、室内の家具や荷物の保管、設置場所の点検も必要です。

<倒壊原因>
では、1、2になってしまう原因には、どういうものが考えられるでしょうか。
まず、1 違法建築で、耐震性に問題があった場合が上げられます。
そうでないとしても、2 柱にシロアリなどの被害があり、強烈な最初の縦揺れにより、柱自体にかかる垂直方向の加重に耐えられず、つぶれる場合、3 筋交いは、縦揺れには有効ではなく、縦揺れにより筋交いが外れると(なお、古い建物はともかく、現在の建築基準法では、筋交いを固定するための接ぎ手金物の設置が義務づけられているので、直ちに危険というわけではありません。)、次に来る横揺れにより、柱の水平方向に引っ張る力が生じますが、通常は筋交いで抑えるこの力に対して、筋交いがないため耐力がなく、柱の横転を招く場合(言葉で説明するのは難しいですね。)が考えられます。

私が、見たところでも、柱の横転だけではなく、柱そのものがつぶれ建物の形が完全にない建物もありました。家の前で放心状態で座りこむ人の座高ほどのがれきの山となった建物の状況は、大変、悲惨です。

この日本では、安全な建物に住むということは、生命を守ることに直結するわけです。

私の住んでいた建物は、パネル工法の軽量鉄骨2階建で、壁の下部が床と接着していなかったようで、地震により棚から落下した茶碗が割れ、床に落ち、建物がゆがんでできた壁と床の空間にはさまれるように入り込んでしまいました。幸いなことに、壁パネルがそれだけ激しく動いたにもかかわらず、建物完全倒壊は免れ、地震後も住むことができました。茶碗のかけらについては、結構気になって、地震後に、いろいろ試しましたが、びくともせず、結局、そのままにして退去しました。今でも、壁と床の間に、茶碗のかけらが入っていると思います。

なお、この事実により、軽量鉄骨のパネル工法を推奨するものではありませんが、建物が軽いというのは一つのポイントだったと思います。建物が新しければ、南(被害が大きかった浜側)の方でも残っていた建物はありましたから、近年の建築基準法基準を建物が維持していたかどうかで明暗が分かれた気もします。


<死者をなるべく出さないために>

ところで、人間の体は、長時間体の一部に血液循環がなされないと、その部分が壊死するだけでなく、仮に壊死部分を緊急に切断したとしても、毒素(正確には壊死部分の腐った体液、血液)の体内蔓延による臓器不全で、クラッシュ症候群や、再還流症候群により死亡するケースがあります。
救助された直後はきちんと会話もできたのに、手術後突然死んでしまったというのは、当時何回か聞いたことがあります。

そのため、倒壊した建物の中に人が取り残されれば、そこから早く救出することが必要となります。

私の住んでいたところの近所では、町内会の若い人たちが集まって、早い段階で、建物倒壊したがれきの中から住人を救出したところでは、死者は出ずあるいは少なく、すぐに動かなかったところは、同じような被害だったにもかかわらず、死者が出たと聞きました。

日頃から、近所づきあいをするようないい関係を築けたか、寝室の場所(阪神大震災の場合には、多くの人が就寝中だったので)がわかるような近所の人がいたかどうかが分かれ目となったということでしょうか。

近所づきあいは、こういうところでも、大切です。


なお、阪神大震災の教訓から、クラッシュ症候群対策として、体に壊死が見られる人を救出する場合には、がれきから救出する前に、壊死した箇所から心臓方向より一周りを確実に完全に止血してから、救出するようになっているようですが、やはり救助は早いに越したことはありません。

投稿者 : admin 投稿日時: 2007-08-16 (961 ヒット)
防災の日に向けて その1・・・・阪神大震災の教訓

阪神大震災では、地震を原因とする火災が発生し、12時間以上経過しても鎮火されなかったことは知られています。しかし、地震特有の事情により、通常の消火活動ができなかったこと、そのため、火事が容易に燃え広がったことは、あまり一般的に認識されていないように思います。
ここで、防火という観点から、震災当時神戸市灘区に住んでいた私の経験から、日頃の備えについて、コメントしたいと思います。

1 延焼の危険の増加
まず、木造住宅の特色として、防火構造を有する外壁が破損したら、木材がむき出しの構造となります。鉄骨作りでも、木部は意外に多く、外壁が壊れたら、木材がむき出しの状態となります。

つまり、建物が全壊しなくても、外壁が壊れ、外装が破損したら、周囲から発生する火事に弱い構造となってしまいます。
震災では、火災から6時間以上経過した後で、延焼により、町内焼け野原になったところもあります。

関東大震災の後には、火事に強いと、外壁に銅板を貼ることがはやったようですが(東京都中央区には、ところどころに、そういう造りの住宅が残っています。)、延焼の点では、地震によって剥離する可能性があるモルタルよりも、(水切り部分をどの程度開けているかにもよりますが、)難燃性の壁を接着させるサイディングの方が、防災観点からは優れているのではないかと、思いますが、サイディングも剥がれたら同じことなのでしょう。
とすれば、問題は、2ということになります。

2 取り得る消火活動の限定
震災の際には、消火活動が通常のようには行われません。
  
神戸特有の事情だったのかも知れませんが、水道が止まると、河川の水や、学校のプールの水からしか消火ができず、どちらも水量が豊富ではないので、ホースから勢いよく流すほどの水が確保できていなかったように記憶しています。
(もっとも、あの日に、長田ほど大火ではありませんが、近所でも火事は長時間続いていましたが、近所では消防車の出動を一度も見ず、消防士さんが、建物全体が既に燃えさかっているマンションの外廊下を生存確認に走り回っている姿と、消防団の人がホースで消火している姿だけしか見なかったように記憶しているので、道路事情や、人員不足その他で、消防が機能していなかったこともあるかも知れません。)
本来であれば、絶対に延焼しないはずのチョロチョロした炎であっても、あの日は、なかなか消えませんでした。
 
つまり、消火は、放水による消火ではなく、延焼防止が中心でした(江戸時代の延焼防止を目的とした家屋破壊による鎮火活動を想像してください)。
といっても、堅固建物が多く、破壊もままならず、結局は、火の勢いが大きいと、炎から上がってくる火の粉を止められず、延焼が広がったのです。
  
では、火の延焼をとどめたのは、何だったのか。

当日の私の見たところでは、広い道路で周囲が囲まれたブロックに火がついたらブロックのほぼ全部の建物が火事になっていました。だから、ブロックの端や角にある建物から道を越えての延焼を止められるかどうかが、問題だったのです。
 
それは、角にあった(ブロック全体が焼け野原になると、ブロックの端などから道をはさんだ隣のブロックの建物に延焼する。)、大きな常緑樹だったり、鉄骨スレート、あるいはコンクリート造りの建物で、高温に強い針金入りの窓ガラスサッシを使用した建物でした。
 庭の生け垣や、木は、なかなか燃えにくく、燃えても火の粉をあまり出さずに、くすぶるので、火事のいわば防波堤になります。私の住んでいたところは、斜め隣のブロックまでは焼け野原になりましたが、角に木がうっそうとした家があり、そこで、火事が食い止められました(もちろん、その場にいた多くの人が火の粉を消しての消火活動をしたことも大きな要因です。その木もその家も、焼けこげたので、結局解体となりましたが、私は、今でも、当時住んでいた家が燃えなかったのは、あの家と木々のおかげと思っています。)。
 家の周りに常緑樹を植えるのは、意外なところで、効用があるのかもしれません。

 また、聞いたところによると、長田区の一角の賃貸用建物では、大家が医師か歯医師かで、泥棒よけにと、窓ガラスのサッシを全て針金入りの丈夫なものにしていたため、通常のガラスよりも耐熱性が高く、窓ガラスが割れなかったため、火事を免れ(コンクリート建物の場合には、窓ガラスが割れ、割れた窓から火が入って、建物が火事になります。)、結果、この建物からの延焼がなかったため、その建物に続く一角が火事を免れたことがあったそうです。
 
マンションは、コンクリート造りなので、木造の戸建のように外壁剥離による延焼の危険増加は考えなくていいですが、密閉性が高い構造上、一旦火がつくと火力が大きくなり、窓ガラスを突き破って、炎が上がり、マンションがほぼ全棟、全焼したりしました(平時は考えられませんが)。
 窓ガラスを丈夫なものにするのは、防災の点でも有効だと考えます。
  
3 まとめ
 大地震の際には、平時と異なり、放水による十分な消火活動 は、そのキャパ、必要な水量の確保という点からも、期待できない可能性が大きいことから、日頃の備えが必要です。
 その意味で、住んでいる家を、建物が一部倒壊しても、外壁が難燃性の構造を維持できるものにすること、窓ガラスを耐熱性のものにすること、家の周りに常緑樹を植えることなどが、実効的と考えます。


 なお、火事を出さないようにすればいいのではないかと考える人もいるかも知れません。
 しかし、実際に震度7クラスになると、部屋の中の全てのものが、全部跳ね上がり、ぐらぐら揺れるので、部屋の中は物が飛び回る状態で、引火は、火を使っていた人には、防ぎきれない面もあったのではと考えます。私も関東育ちで、年に3回の避難訓練などにより、地震が来たら、火の不始末注意と避難経路の確保というのは、基本的に身に付いていますが、100%の自信をもって、仮に火を使っていても出火しないとは言い切れません。

強いていえば、実践的には、台所やストーブなどの火が燃え移ったら、ステンレスの上にとどまるのであれば、放置し(他に引火しなければそのうち消えます。)、揚げ物等で油を使っていれば、冷めるのを待つ。床、じゅうたんに引火すれば、燃え広がらないうちに、消すことが肝心です。
 火事が広がれば消火が十分にできず延焼することも予想されるので、その家の家財消失だけでなく、がれきに取り残された生命を救うことになるという意味でも、一人一人が、誰もができる初期消火活動をきちんと行うことが特に重要です。
・・・なお、初期消火ができるかどうかは、家人の地震によるケガの程度、物の散らばり具合などにもよりますので、どんな諸条件下でも完全に消火できる自信は、先に書いたように私にもありません。

 消す場合には、消化器、水などで燃焼そのものを止めるやり方と、燃焼範囲より大きい布団などをかぶせて燃焼に必要な酸素をシャットアウトするやり方があると言われています。ある程度の範囲の燃焼があれば、再燃焼を防止するため、燃焼部分を冷やすことも必要です。
 火は、発火温度、酸素(空気爆発を除く。)、燃焼物の条件を満たして、初めて燃焼します。
 地震によるガス管の破損は至る所に生じますので、被災直後はガスのにおいに注意して、火を使用しなければなりません。


 
 地震の備えは、食料と水だけではありません。 
 これから、防災に関することを、いくつか書いていこうと思います。
 
 末筆になりましたが、震災により亡くなった多くの方々に、心より、ご冥福をお祈りします。

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