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時事問題 : エネルギー資源について考える
投稿者 : admin 投稿日時: 2013-01-24 (699 ヒット)
 アルジェリアの天然ガスプラントでの日本人殺害事件の報道を見て、改めて、資源供給の有難さを実感するとともに、日本に輸入される天然ガスが、そういうご苦労や犠牲が陰にあり、送られていることを改めて実感しました。亡くなった方々のご冥福をお祈りいたします。
 どういうエネルギー資源でも、人的・物的犠牲とは無縁ではいられないのかも知れません。

 さて、最近原子力規制委員会が、国内の原発施設の地質調査で、敷地内の地層のずれは断層なのかとか、活断層かどうかは10万年前ではなく40万年前に遡って判断すべきだなどと意見が出たなどの報道がされています。
 こういう報道を見ると、直下に活断層があると危険が増すかのように感じますが、活断層であれば何がいけないのか、見えてきません。
 原子力規制委員会は、断層が生じると地表面の高低差により、建物が倒壊するというのでしょうか。

 活断層が注目されだしたのは、阪神淡路大震災の原因が活断層が動いたためとされたことによります。
 阪神淡路大震災の時には、神戸の市街地を地震の原因となった活断層が縦断したわけですが、市内でははっきりした断層は地表に現れませんでしたし、活断層と推定される地域、地点の建物倒壊が顕著だった事実もありませんでした。地震後断層が現れたのは、淡路島の田畑だったと記憶しています。この時の報道では、市街地は、ビル等の建設の際に、地中深く掘り返したので、断層が出なかったのではないかと言われていました。
 このことから明らかなように、活断層の真上にある建物だからと言って、必ず倒壊するわけでもないし、活断層を境にして必ず地盤に高低差が生じることもないのです。
 当たり前のことですが、震源は地中にあり、地震の影響は地震の大きさと距離で決定されるので、活断層があること即地震の被害が大きいと断定することはできません。

 さらに言えば、鉄筋コンクリートの頑強な基礎のある建物で、建物の基礎の下に、きちんと地下の岩盤まで到達する基礎杭が入っているのであれば、敷地の一部の地盤沈下で、建物が倒壊する危険は、まずないと思われます。
 つまり、建物そのものが、耐震基準を満たし地中の支持地盤まで杭がきちんと入り、基礎のかぶり厚が十分に確保され配筋が縦筋・横筋ともしっかり入っているのであれば、地盤の一部の沈下はあっても、建物のそのものは沈下せず、基礎のゆがみもないはずなのです。
 これは、3.11の際の浦安の液状化現象では、地面からマンホールが飛び出す状態になり、地盤は沈下したが、他に支持物があった下水管やマンホールが沈下を免れ、沈下しなかった例が当てはまります。
 
 建物の敷地全体が均等に沈まず、建物の一部のみ沈み込むことを不等沈下と言い、不等沈下は、欠陥住宅として問題になります。敷地全体が沈下すれば、建物にはゆがみは生じず、建物の欠陥とはなりません。
 ちなみに日本の場合には、建物が傾いた場合の欠陥の基準は、傾き1000分の3程度、すなわち、ちょっと傾いても欠陥で補修対象です。しかし、3.11の際にも、建物が傾いたのは、軟弱地盤に建った木造家で、鉄筋コンクリートの建物が傾いた例(但し極端な手抜き建物であれば、傾く可能性はある)はありませんでした。

 活断層があるから建物が危険だ、建物倒壊するなどという発想は、建築の視点でみれば、かなりの違和感を覚えます。原子力規制委員会は、一体どういう有識者で構成されているのかと疑問に思うくらいです。

 また、現在の通説であるプレートテクニクスによれば、日本列島そのものが、プレートが沈み込む場所で、地表にゆがみが出やすく、40万年も遡れば、断層が確認できる地域は多くなり、断層が地表に現れないところは、厚い堆積層があるところだけではないか、地盤が固いのは前者なわけですから、断層が全く地表に現れない方がむしろ危険なのではないか(地盤が固くない方が一般に揺れが大きくなる)とか、素朴な疑問を持つのですが、どうなのでしょうか。
 地質学のための地質の議論をしているわけではないはずですから、建築工学の視点をブレずに持ちつつ、現実的な視点から現実的な検討を加えて欲しいものです。このままでは、不毛な議論が迷走するだけのように思えます。

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