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時事問題 : 前回の教訓が生かされたのか・・淡路島M6.3地震
投稿者 : admin 投稿日時: 2013-04-14 (851 ヒット)
 本日、18年前の神戸の震災を彷彿させる大きな地震が淡路島を震源として発生したと報道がありました。
 今回は、18年前よりさらに朝早く、また土曜日早朝だったこともあり、時間的な幸いもあったのでしょうか、けが人もあまりいないとのことですね。

 今回の地震は最大震度が震度6弱で、縦揺れがほとんどなく横揺れであったとのことですが、なにぶん神戸の浜側は、堆積層の地形で結構揺れますから、以前なら、この程度でも倒壊する家屋はあったのではないかと思います。 
 18年前は、特に戦後混乱期頃に建てられた古い建物が密集している地域で、建物の柱ごと潰れ跡形もなく一気に倒壊し全壊した建物がたくさんありました。
 全壊建物が全くないのは、これらの建物が建て替えられた成果であり、大変喜ばしいことです。

 地震の多い日本でも、それなりに耐震性能を持った建物であれば、問題ないということの一例として挙げられると思います。  

 ちなみに、役所基準の一部損壊とは、たとえば、コンクリート建物の天井ジーシングボード(天井の一部ではあるが、躯体ではないため、構造とは無関係)が落ちてきたり、屋根瓦が崩れた場合には、一部損壊だったはずです。建物本体には影響なく倒壊の危険はないが、ずれた瓦の重さで母屋が折れ、小屋組のみ壊れた場合でも、半壊になったはずです。
 ですので、半壊、一部損壊は、一般で思われているよりも、やや細かい基準となります。

 ところで、現行法では、品確法(住宅の品質確保促進に関する法律)により、耐震性に関する性能保証基準が設定されています。
 数年前、確か3.11前後のころだったと思いますが、木造住宅の耐震実験をして、耐震性の性能保証基準をクリアした、きっちりと構造用合板をくぎ打ちして建てた木造住宅と、それよりも少し緩く建てた木造住宅を比較して建物倒壊実験をしたという報道がありました。
 その結果、ゆるい基準の建物の方が、早い段階(震度7程度)で建物に建物全体に亀裂が入ったものの(上記の役所基準でいうところの全壊)、かなりの震度になっても最後まで建物は柱を含めその形をとどめたが(建物は全壊だが、建物そのものによる圧死の可能性はかなり小さくなる)、耐震性能の建物は震度6程度では建物はびくともせず壊れないが、かなりの震度になった際に、一気に柱ごと建物が跡形もなく倒壊したという実験結果になったとのことでした。

 この結果は、頑強性を追求した耐震性能の建物は、ある程度の大きな地震でも、建物はびくともせず、半壊も全壊もしないが、激震すなわち大規模地震になれば建物が跡形もなくなる程度に完全に倒壊する(すなわち中にいる人は圧死する確率が高くなる)という結果になるわけですから、なかなか考えさせられる結果です。

 18年前に全壊建物の中での倒壊具合の大きな違いを実感している者としては、この結果は、気になります。
 もともと、全壊、半壊、一部損壊の区別が建物の建替の必要性、程度で判断するものなので、全壊の基準から考えれば、耐震性の性能保証はそれなりの意味を持ちますが、数百年若しくは千年に一度の大規模地震での激震地となった際に(ピンポイント的な、時と地点の一致が必要なため、その遭遇確率は天文学的に低いのかも知れませんが)、建物そのものによる圧死があるどうかの観点からいえば、この耐震性能の基準はどの程度意味のある基準なのかということになるわけです。

 発生確率の問題と倒壊をどう捉えるかの問題と言えますが、なかなか微妙な判断が付きまといます。それとともに、遊び(自動車のブレーキの遊びと同義の意味です)の重要性を改めて痛感させられました。
 これは、ゆるい基準の場合には、どこかが壊れることにより、それまでかかっていた外力のモーメントが、倒壊により別のモーメントに変化して(壊れた部分で力の伝わり方が変化する)、かなり強い外力がかかっても、建物全体が跡形もなく崩れる事態にならず、建物の形は残るが、耐震性能の方は、建物全体に外力のモーメントがかかるので、一定限度までは頑強であるが、限度を超えると建物全体の耐久力の消滅を招き建物全体が潰れる結果になるというのが、理論的な理屈なのではないかと個人的には考えます。
 そうであれば、耐震性能として想定される最大の地震力以上の建物耐力を確保すれば問題解消ということにもなりますが、最大値をどうするのかは結構難しい問題があります。

 
 国交省の個別認定制度があり、頑強さにより耐震性能を満たした建物が、耐震性能住宅のすべてではないはずです。したがって、頑強さを有した耐震性能の基準に限界があるとしても、個別認定に当てはまるとは限らず、正確に記載しようとすると表現が難しいのですが、耐震性能も、頑強さの追求だけでは不十分で、言葉のとおりですが「柔よく剛を制す」場合もあることを視野にいれるべきではないかと思います。

 この実験結果の報道は、私個人としては、ずいぶん前から気になっていたのですが、話題にすることにしました。

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