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時事問題 : トンヘ = 東海 と、東アジアの言語に関する考察
投稿者 : admin 投稿日時: 2014-01-28 (880 ヒット)
 さて、日本海をトンヘと教科書に併記する決議が、アメリカ バージニア州議会上院で可決されたことについて、コメントしましたが、ハングル、日本語、中国語が、漢字をもとに発展した言語であることの説明がわかりにくいようなので、わかりやすく、ざっくりと解説してみたいと思います。
 
 もともと漢字は、象形文字が発達した文字で、現段階においては表意文字・意味をあらわす文字として機能しています(後で書く、中国の簡体文は除外して考えます)。

 主に日本国内で使われる日本語は、漢字、かな文字を混用し、かなの利用を主に動詞、形容詞、形容動詞等の活用の部分と助詞で使用し、動詞、形容詞、形容動詞、名詞等の本体の部分つまり活用がない部分は、漢字で表記して使い分けます。このようにすることで、漢字の表意文字の特徴を生かしつつ、表意文字とは無関係な文字部分、活用、助詞等を表音文字(音をあらわす文字、アルファベットは表音文字)であるかなで表記し、文章を筆記する際の利便性を維持しています。また、外来語は、カタカナでそのまま表音文字として使用することもできます。こうやって見ると、日本語は、使用文字が多く、とっつきにくいと思われますが、コツさえ覚えれば、なかなか便利な言語でもあります。
 
 他方、漢字だけで、言語が発達している中国では、表音文字と表意文字の区別がもともとなく、そのため、例えば、computerは、日本語だとコンピューターとなりますが、中国語では電脳(電子頭脳)と、意訳して使用するのが一般ということになると思いますが(すべての外来語がそう当てはまるのかは不明)、そうすると、外国語の翻訳をしなければ使えないということになり、表意文字ゆえの言語の硬直性のジレンマがでてきます。
 そういうことも、近年中国で、利便性のある簡体文が出てきた理由の一つではないかと思っています。日本人にしてみたら、もとの漢字がわからないくらい簡略化されているため、逆にわかりづらくなっている気がしますが、中国にとっては、国際化に耐えうるための方策なのかも知れません。
 
 他方、台湾は対照的に、繁体字が使われますが、こちらは英語が通じるお国柄、漢字にできないものは、そのままアルファベットを使っているような気がします。

 つまり、漢字というのは、日本(1億人以上)でも、中国(10億人以上の漢字を使うすべての地域)でも、台湾でも、多少の誤差はありますが、基本的な文字は同じで、「東海」と書けば、読み方はそれぞれ、日本語、中国語、台湾語と異なりますが、意味は共通で「東の海 = 英訳すればeast sea」を意味します。

 そして、朝鮮半島も同様で、ハングル読みでは「トンヘ」なのですが、文字で書けば同じく「東海」でした。60年あまり前までは。
 ハングルは、日本語でいうかな文字のようなもので、表意文字である漢字の読みを、近世、表音文字に起こしたものです。ですから、すべてのハングル文字、あるいはハングルの表現は、漢字を語源、若しくは漢字の表記をハングルに置き換えており、ハングルの言葉は、基本的に漢字に直すことができます。
 ただし、ここで問題なのは、表意文字である漢字の語源を理解している場合には、ハングルを漢字に直せますが、表音文字であるハングルしか理解していない世代、あるいは、韓国系アメリカ人の一部のように、ハングルしか教えらなかった環境に育った人にとっては、表音文字たるハングルを、表意文字である漢字に直すことはできません。これは、言語の構造上、当然のことでもあります。
 そうすると、もともと「東海」を意味するはずのハングル語の「トンヘ」が独り歩きすることにもなるのかなと思います。
 朝鮮半島が、公文書でハングル文字を使い始めたのは、わずか60年程度のことです。日本統治当初の市民の識字率は低く、文字の習得率も低かったですが、それ以前の時代も(具体的には1500年以上にわたって)公文書は漢字が使用されたはずです。

 つまり、最近60年の、漢字を公用語、公文書から排除した時期はともかくとして、朝鮮半島で、それ以前に、仮に日本海のうち朝鮮半島の近くの近海を、ハングル語でトンヘと言っていたとしても、朝鮮半島の公文書では「東海」と書くわけで、ハングル文字の「トンヘ」の文字が広く使われていた事実はありませんし、漢字圏では、共通文字である文字が優先するため、ハングル語のトンヘという言葉を、そのまま他国が使うことは言語の構造上ありません。
 更にハングル語のトンヘの漢字表記である「東海」が、朝鮮半島を離れ、他の漢字圏に広がっていたかと言えば、およそそんなことは考えられないのです、他の国にとっては日本海は「東海」ではないのですから。
 

 ですから、日本列島を大きく取り囲むこの海域は、「東海」すなわち「トンヘ」ではありません。
 
 地理的、歴史的、何より語源からしても、日本海が正しいことになります。

20141205補足
 総合インテリアメーカーのIKEAが韓国国内の反発に対応する形で、世界的には正式な呼称である日本海の記載がある世界地図のインテリア販売を中止する旨の決定を出したとの報道がありました。
隣国といえど、常識知らずですいませんと言いたくなります。
 ドメスティックな独自の主張が、仮に、伝統的に表音文字を使用するため漢字の故事来歴など、考えも及ばない人々に一定の理解を得られたからと言って、少なくとも漢字の故事来歴を理解する漢字圏では、明らかにおかしいその発想が通用するとは思えないのですが。漢字を忘れたオールハングル国家では、表音文字の発想で、表意文字たる漢字の発想ではおよそまかり通らないこともまかり通るということでしょうか。
 そうは言っても、韓国まだ漢字を手放して100年は経過していないのですから、常識的な反応、対応はできなかったのかと悔やまれます。

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