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時事問題 : 最近の生物学を文系的に考察する
投稿者 : admin 投稿日時: 2014-06-22 (988 ヒット)
多忙による現実逃避を兼ね、つらつらと最近の生物学のニュースを日頃感じた疑問的に絡めて書いています。意見は個人的見解で、科学的実証はありません。悪しからず。

最近、松山高校の高校生が、アルビノのメダカ同士からアルビノでない正常なメダカが生まれるメカニズムを解明したというニュースがありました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20140618/CK2014061802000140.html
簡単に説明すれば、生殖細胞においても「動く遺伝子」があり、その遺伝子によって、色素に関する特定遺伝子に問題があるメダカ同士でも、正常な色素の遺伝子を持つメダカが生まれることを科学的に立証したとのことです。
 補足*以前はアルビノは色素遺伝子が欠如した状態で、アルビノの個体同士からはアルビノしか生まれないと考えられていました。

 体細胞だけでなく、生殖細胞においても、動く遺伝子が存在するという発見はいかに生物がファジーなのかを如実に表しています。
 補足*このことにより、アルビノは、色素遺伝子が欠如しているのではなく、ゲノム的には存在する色素遺伝子情報に、問題が生じていることがわかり、またその遺伝子情報の問題が、動く遺伝子が原因となることで、遺伝子異常の時間的問題(無から有は生まれないという科学の定理と矛盾するずれの問題)の解決がなされたと考えます。

 個人的には、この遺伝子の存在は、良性腫瘍とガン細胞の分水嶺となる、ガン細胞の異常増殖の特質獲得のメカニズムを説明づけられるのではと期待していますので、将来的には大発見として位置付けられるのではと思うのですが、どうでしょうか。
ガンは、同一組織内で増殖するだけでなく、他臓器へ転移しますが、がん転移には一定のパターンがあります。臓器のつながりや、リンパ液等を介在して転移するだけではなく、臨床的には、血液、リンパ液での直接の繋がりはなく接触しているだけの臓器でもガン転移が起きると聞いた時、何かしっくりこなかったのですが、遺伝子情報に関する動く何かの存在があれば、説明できそうな気がします。
 補足*がん、腫瘍は細胞分裂の際のコピーミスすなわち遺伝子情報の異常複写により発生します。それまで正常だった細胞が細胞分裂により、問題が発生するわけで、そこに何らかの異常が時間的にはアトランダムに発生する仕組み、すなわち遺伝子情報が書き換えられるメカニズムがあるはずです。その内的要因の一つとして、この動く遺伝子の存在が考えられることになります。今までは、発がん性物質等、体内へ働きかける外的要因について研究が進んでいましたが、これからは、遺伝子情報的にどのように変化するか、内的に変化するメカニズムの解明が期待されるわけです。

また、たとえば、体細胞を万能細胞に代えるiPS細胞のがんの高発生率の原因も、動く遺伝子のような働きをする、遺伝子レベルでの自己修正能力により、説明できるかも知れません。
今後の研究に期待したいと思います。

さて、生物学のニュースと言えば、動く遺伝子よりずっとメディアに取り上げられていたSTAP細胞ですが、西洋的な科学が実証より予言・予測を重視する悪い所が出てしまったのかなと思います。
卵巣膿腫の例を考えれば、単細胞である卵細胞ですら突然変異するのですから、理論的には極限条件であればSTAP細胞となる確率はゼロではないと思いますが、証明がない以上、それまでとしかいいようでありません。
 補足*STAP細胞は、外的要因(いわば触媒)により細胞そのものが万能細胞に変化した細胞と言われています。これが細胞分裂により生じるのであれば、分裂前の細胞の性質を有しない点で、がんや腫瘍の成り立ちに似てくることになります。また、卵細胞は胎児の中で作られ、その後卵細胞としては細胞分裂することがないことから、卵巣の中で、別の体細胞に変化する卵巣膿腫のしくみは、細胞の仕組みは異なりますが、STAP細胞に似ているということになります。

何はともあれ、万能細胞として基礎研究試料としての確立した地位を築いているES細胞の存在があるも、臨床利用ができないというギャップが、倫理上の悩ましさとともに、問題を複雑化させています(一部には、その制限を超えて既に臨床が行われているとの記事が時たま発信されているような気もしますが)。
科学は、宗教、倫理の前でどの程度制限を受けるかどうか、たとえばどういう法制限をするのか、いつの時代も科学者に突き付けられた命題が、今も問われています。

2014.6.30 補足を加筆しました。少しわかりやすくなったでしょうか。時間のあるときに、再調査して加筆します。

2014.8.28補足
 STAP細胞の再現は厳しそうです。
 正常細胞が、簡単に万能細胞になるのであれば、生物としての安定性はとても望めないわけですから、38億年の生物(あるいは生き物)の進化の長い歴史は、少なくとも地球上の環境においては、この問題を不可逆的に解決し終えているということなのでしょう。
 ちなみに、人為的な外的要因(触媒作用)により正常な体細胞をがん細胞に変化させた世界最初の成功例は、日本人が成功させたおコゲで皮膚ガンを生じさせたケースです。柳田邦男氏の往年の名作「ガン回廊の朝」には結構詳しく書いてあったと記憶しています。学生時代に読みましたが一気に読めました。
 ガン細胞は万能細胞の対極に位置しますが、体内の細胞分裂の際のどんなコピーミスでも失敗した形はある程度決まっており、ガン細胞・腫瘍になるのですから、腫瘍・ガン細胞というのも、なかなか興味深い存在です。

2014.12.19補足
 STAP細胞の再現断念とのニュースが本日流れました。専門家ではないので、STAP細胞があったのかなかったのかはよくわかりませんが、結果はともあれ、科学には、実験と数限りない失敗はつきものです。社会「科学」を標榜する立場の者としては「失敗は恐れてはならない」と意見したいです。「東方見聞録の著者、かのマルコ・ポーロは生前ほら吹きと評されたが、内容に誇張はあっても事実であり、後世その功績が評価された」ことがいい教訓となると思います。世の中の偉人には、生前叩かれ死後に一転評価される人はたくさんいるわけです。
 本件が話題になるタイミングで、朝日新聞は、同じような話題でマスコミを騒がせた、クローン細胞の黄教授が、現在でも活躍していることを記事にしていました。
 失敗すれば、訂正し改善を試みればいいことです。記録の仕方が悪ければ改めればいいことです。そして、またやる気になった時に、研究を進めればいいのです。理研に限らず、科学の疑問、進歩に、果敢に挑戦していっていただきたいと思います。

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