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時事問題 : 世界自然遺産を改めて考え直す
投稿者 : admin 投稿日時: 2024-03-09 (103 ヒット)
 さて、今年一番の問題として、私は、国内の世界自然遺産の自主的な登録取消し問題を挙げたいと思います。
 世界自然遺産に登録された地域は国内にいくつかあります。観光資源になっているのも事実かと思います。

 しかし、世界自然遺産に登録すると、指定地域には人が持ち込んだものを排除して「自然」の状態を維持しなければならない取り決めがあるそうです。
 具体的には人が持ち込んだものとは、ゴミなどに限らず、動植物まで含まれ、駆除の対象となります。つまり、当該地域に昔から生息していた動植物は保護するが、近年ヒトが持ち込んだ動植物は全部駆除排除の対象になります。
    
 東北にはブナ原生林の世界自然遺産があります。
 ブナの育成状態はネット上でもデータが公表されていますが、近年は凶作が多く、また開花が豊作の年も、結実は凶作、つまり花が咲いても実らない状態に陥っています。もともと、ブナ林は、豊作と凶作を交互に繰り返すそうですが、結実に関して豊作が少ない状態が20年程度は続いています。この20年はちょうどブナの新芽が若木になるのに必要な期間であるため、このデータはブナ林に若木が十分に育っていないことを示します。
 若木が育たなければ、現存するブナが寿命を迎えれば森が枯れる事態が想定されます。更にそれ以前の問題として、森の恵みがないので、森に依存して生息する動植物の生存が危ぶまれます。
 東北におけるクマ被害については、山の凶作が影響していると言われますが、実がならないブナ林では生息できないわけですから当然かとも思います。

 これは、温暖化の中で、従前の植物がその土地の気候に合わなくなりつつあり、本来であれば、森林の中で樹木の植生の交代がスムーズに行わるべきところを、急激な温暖化という気候の変化に森林が追いついていないため生じている、過渡期の現象と考えます。

 ところが、世界自然遺産の指定地域の中では、従前の植物が植わる森を維持しなければならないため、他の地域の植物の新規育成が排除されます。
 本来であれば、例えば、更に南限若しくは低い地域で生育するブナに変える、あるいは、ブナ林から別の樹木に植生が変わる、変えるのが望ましいし、それが本来のあるべき森林変遷の姿ですが、意味のない人間のルールにより、それが阻害されていいのかというのが、私の疑問です。
 樹木は成長や変化が緩慢なため目立ちはしませんが、自然任せだけでは、森林の樹木の種類の交代が追い付かない懸念すらある中、変化を排除するというのですから、長い目で見るとこれは「自然破壊」に他なりません。
 「自然を維持する」との名目で、木々の恵みを森の生き物たちが享受し、その生き物たちが木々に恵みをもたらすという森の循環作用の消滅を、ヒトが促進させているようなものです。温暖化による森林の変化は大きなものではありませんが、直接影響を受ける、森に依存して生息する動植物にとっては、死活問題であるとすれば、これらを配慮すべき段階に来ていると思います。

 ヒトは所詮ニンゲンにすぎませんが、ニンゲンの強みは、他の動植物に先んじて環境に対応きる能力があるところだと思います。

 世界自然遺産の認可に関わる担当機関の方々には、「自然保護」を提唱して、森の枯死すなわち「自然の消滅」という悲劇を生まないように、この「ヒトが持ち込んだ動植物は自然破壊であり、駆除しなければならない」という喜劇のようなルールに縛られることなく、環境に適応した自然の維持を考えていただきたいと思います。
 
 温暖化の影響により、全国的に森林の再生がされているかどうか検証すべき段階に入っていると思います。
 現時点の世界自然遺産のルールでは登録取り消ししか、救済方法はありません。

2024.3.16補足
 文明の黎明期における古代都市は、どこも当時は森林の中に存在しました。
 それが、メソポタミア、エジプト、黄河流域、黄土高原では現在では砂漠が広がり、逆に、中南アメリカ、東南アジア(若干時代は下りますが。)では、緑に飲み込まれていました。
 この二つの結果の違いは、南アメリカでは青銅器文化はあっても鉄器文化が入ってこず、人による森林伐採を免れたためと言われますが、東南アジアではもちろん鉄器文化も入っているので、この違いは、単純に森林伐採規模と伐採手法が原因とかと思います。
 旧約聖書の記載された動物の、その生態からすれば、当時のメソポタミアの人々が森林を完全に伐採したとは思えませんが、度重なる大規模な戦乱を経て、燃料となる樹木の大量伐採がされたことは想像に難くありません。
 どの程度の森林が消滅すれば、かつての大森林地帯が砂漠となるのか。その限界については、大いに興味があるところです。限界を超えないようにしなければなりません。

 近年、メキシコ湾流(暖流)の到達地点の南下による、北部ヨーロッパ沿岸部の気温低下や、海水の沈み込み現象の停止などが問題になっているようですが、アフリカのサハラ砂漠の拡大に変化はないことからすれば、暖流の発生場所であるメキシコ湾の変化、更には、その南のアマゾンの熱帯雨林の減少(森林から蒸発する水分の減少による上空の大気の水分の漸減の蓄積)が原因となっているのでしょう。北部ヨーロッパにおいては、温暖化は気候維持に資することになりますが、北米のハリケーンの減少などを見るに、ヨーロッパの乾燥化は避けられないので、やはり問題を解決するに越したことはありません。
他方、太平洋では、ヨーロッパとは対称的に近年黒潮(暖流)が北上していますが、黒潮の大蛇行もあります。気候の変化は決して他人事ではなく、特に、東南アジア、東アジアの森林伐採の限界として、マクロ目線で、どの程度までならば砂漠化、乾燥化が防げ、森林が維持されるのかについては、急激な開発が進む今、事前に考えておくべき事項です。

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