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時事問題 : 弁護士が増えてきたことのメリット
投稿者 : admin 投稿日時: 2008-02-10 (3068 ヒット)
さて、私は、弁護士の激増には反対と書きましたが、そういうことを書くと、「弁護士業界は現代のギルドであり、閉鎖的職業の専横」と言われますので、弁護士増加を前向きに捉えて(年間3000人増員しなくても、年間1500人の増員は決定的なので)、弁護士が増員されることによる、弁護士のメリットについて触れたいと思います。 

弁護士側からするところのメリットとしては、弁護士会としての組織力が格段についたため、地方行政のみならず、国家行政にも大きな影響力を持つことになることです。
 もともと、弁護士は顧客層が幅広く、支持母体が多岐にわたるので、産業界のように金の力にものを言わせられなくとも、票動員力はあったのですが、自らが巨大組織となることで、組織そのもので主体的に行動できるようになりました。

 また、弁護士業が一生の職業でなくなったために、弁護士経験を生かして、多方面特に政治家などへの転身が広く行えるようになったことも特色かもしれません。
 近年の弁護士出身の国家元首の多さも、弁護士の多方面への活躍の可能性を裏付けるものです。
 韓国の前大統領、イギリスのブレア元首相(正確には国家元首は女王でしょうが。)、アメリカのクリントン大統領、アメリカ民主党のオバマ、クリントン両候補も、皆さん弁護士出身です。
 ちなみに、クリントン候補は、弁護士時代医療過誤を専門にされていたとか。それで、今回の「国民皆保険」の公約がでてきているのかも知れませんね。
 (アメリカでは、現在、日本のような健康保険制度がなく、救急外来の診察のみが無料で、救急外来(ER)制度の破綻が社会問題になっているようですが。)

 弁護士の業務は、企業相手の企業法務だけでは、企業のことしかわかりませんが、一般市民相手の業務の場合には、今までの自分の生活では体験しない、およそ接触しない人々と直接話しをしたりする機会を持つことで、多様な社会層と直接接することになり、国家や地方行政をどうあるべきか、すべきかを考えてしまう、そんな職業です。
 つまり、言ってみれば、市民相手の弁護士など、法律の限界を日々、感じ、また自分の仕事の限界を感じ、「こう法律を変えれば」「こう法律を変えて、こういう方向に持って行って欲しい」と考えてしまいます。
 利権が絡まない分政治家より、またしがらみがない分、役人より、ずっと率直に、国家、地方行政を考えざるを得ない職業なわけです(もちろん、それで誰もが政治家を志すわけではありませんが)。

 こういうことは、今までの、例えば、私が弁護士になった頃の1万2000人体制で、他国と同様に弁護士が政界に進出できたかというと、それは否でしょう。仕事が多すぎ、辞める選択がありませんので。
 だから、現在の弁護士3万人体制が悪いとは思いません。

 なお、一般に、批判される「2割司法」、つまり人口の2割しか弁護士がおらず、他国に比べて、極端に司法サービスが劣っているという批判には、根底において、大きな誤りがあります。
 そもそも、日本には、法律に携わる業種として、弁護士、税理士、司法書士、行政書士がいますが、これ全て、他の諸外国では、「弁護士」が行います。
 したがって、「弁護士の職務領域の就業人口」の比較でいえば、日本は他国にひけをとらない人口(一説には多いという話しもあります)を抱えています。
 行政書士、司法書士、弁理士、税理士などは、そもそも、弁護士の人口が少ないことを背景に資格制度が始まった面が多分にあり、その意味では、いずれ資格を弁護士資格に一本化する統合論が出てくることになるのでしょう。
 
 ただ、現実には、これらの士業も諸外国では弁護士しかやらない業務をやっているのは事実ですから、諸外国との弁護士人口の比較は、「弁護士の職務領域の就業人口」で比較するのが、正しい比較であり、そうであれば、2割司法という批判は、全く該たりません。

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