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時事問題 : ロシアという国
投稿者 : admin 投稿日時: 2011-02-04 (1607 ヒット)
最近、北方領土のロシアによる実効的支配が促進しつつあるという記事で、ロシアが話題になっています。
尖閣諸島については、政府は地権者から土地を借り上げ政策的に無人島にしていますが、北方4島は、ロシア人入植者が実際に生活しています。力のある政治家が返還前に交流を、と「返還を前提とする経済支援」をしたことと、ソビエトの崩壊によりロシアに経済原理が行き渡り、ロシア産水産物の輸出が盛んになったからか、だいぶ豊かになって来て、今回のように、ロシア側がロシアの行う北方領土の開発を日本側に打診する事態になりました。

 他方で、昨年末には、北海道の水産会社がロシア(国境警備隊という名の武装している組織)側に3年で5億の賄賂を贈ったことが判明したとの記事もありました。
水産庁が入漁料としてサケマスの漁獲高に対して年間21億円も支払っているというのに(http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/090424.html)、なぜという思いを持った人も多いでしょう。
年間21億円の入漁料を支払いつつ、3年で5億の賄賂を他国の武装している組織に賄賂をしなければならないということは、漁業交渉での漁獲対象、漁獲高(ただ、これは操業の効率化により解消する方法もあったはずですが)などが市場ニーズと乖離しているか、我が国政府が、21億円が入漁料(安全に当該海域で漁業をする権利として支払った対価)という認識すら持たせられない交渉をロシアに対してしているためではとも考えてしまいます。
 外務省が現場のニーズをどの程度くみ上げ、経済効率(入漁料に見合った経済効果が上げられる内容を獲得したのか)、牽制効果(入漁料の支払いによって、漁船の航行操業の安全が完全に確保されるのか)を最大限引き出す交渉したのか、確認したいところです。

賄賂を贈ったとされる北海道の水産会社4社にしても、多少年商が減少しても、3年で5億円の賄賂を中止し、その分を純利益として計上できるとすれば、財務体質のかなりの改善が見込まれます。このご時世で年3000万円の年間純利益をたたき出す会社は、健全というか、優良企業の範疇に入るはずです。
 
 もっとも、ここでは、年間21億円も支払って、どの程度の純利益がでているの?とか、食卓には北海道産(入漁料を支払ってもロシアの海域で獲っても北海道の漁港に入れば北海道産となります)のサケが少ないのはなぜなの?、5億も賄賂を出す余裕があるならば、入漁料の一部負担して貰えばいいのでは?とか、これって全部武器購入費用だったり、北方領土への軍の配備費用に充てられるのでは?など、細かい話をするつもりはありません。

 ただ、ある結果が生じるには、その原因があります。
我が国が北方領土のロシア化に反対なのであれば、ロシア化を阻止すべく、返還を最終目的とする、地道な経済的効果を伴う政策的配慮が必要であるということになるのでしょうか。
 本来であれば、もう少し前のタイミングで、ロシアと、「おみやげ(経済援助)つき」返還条約を締結すべきだったのですが、タイミングを失しています。
 国家間では問題は停滞していますが、草の根交流は着実に広がり、ロシアのビザで北方領土を訪れる日本人は絶えないようです。
 ロシアは、距離的に日本に最も近い外国の一つです。政府が4島返還を掲げるのであれば、ロシアに渡す資金が、極東配備の武器購入費用とならないように、ひもつきにしているか常に注意する必要があるでしょうし、効果があがったとは思えない返還に向けた経済支援と決別し、返還が実現されない前提で断固とした措置を取るのか(北方領土は、北海道とのつながりさえなければ、極東の最果ての地でしかありません。)等、きちんと方針を立てて、対応しなければ、経済の浸透、発展により、冷戦時代の仮想敵国レベルの関係に陥り兼ねない逆効果が生じます。

 極端な話、返還に伴う多額の資金、返還後の経済効果などを考慮すれば、メリットだけでなく、4島返還を受けるデメリットも大きいわけですが、地政学的には我が国にとって4島返還は譲れず、まして、ロシアが実効的支配を強めるのも容認できないところです。
 それでは、双方にとって何が現実的なのかといえば、ロシアが、尖閣諸島のように、4島から住民を退去させ無人状態の緩衝地帯とした上で、国後島の先のウルップ島や樺太と北海道を結ぶ航路を設ける等、民間の経済交流を活発に進める基礎作りをすればいいのでしょう。双方に実効性ある経済発展を促すという意味では。
 ロシアの実効的支配が及ぶ中での、北方領土にこれ以上の経済支援をしても、長期的戦略を立ててのことでなければ結果が出ないと思われます。北方領土の軍備増強をちらつかせるロシアに対して軍事的抑止力は常に別に確保しつつ、他方で、ロシア国内での北方領土の価値を高めないよう、ロシア内部に日本に北方領土を返還させる動機づけを確保するのは、現在の政府では、実際困難でしょう。

 先日、熱心な多額の経済援助を背景に、中国が、タジキスタンから領土割譲を受けました。中国国内世論は割譲を評価していないようですが、割譲自体が近年世界的に稀であることは間違いありません。
 領土返還はやはり大変なことです。

 築地の辺りではロシア人らしき人々も見かけます。日本人が外国人とイメージする金髪碧眼は、北方民族であるロシア人には多いです。
 ロシア語通訳でエッセイストの故米原万里さんが、かなり前ですが朝日新聞の日曜版の連載コラムの中で、「ロシア人の知人に『日本人の幹部にはいろんな顔つきの人がいる』が感心された。確かにロシアでは髪の色は様々だが、幹部は顔つきが同じである」という内容の記事を書かれていました。
 ロシアはれっきとした多民族国家ですが、政治でも経済でも、幹部には同じ顔つきの人が多いということですね。それは、程度の差こそあれ、極東地区でも同様のようです。日本は、黒目黒髪であれば顔つきでの差別がないということなのでしょう。
 ロシアという国は、日本から見ると大変判りにくく、感覚的には65年前と対して変わらない警戒感と緊張感を持っていい国のように思えてしまうのですが、総括すると、ロシアは支配階級層が同じ顔つきをしている多民族国家ということになるのでしょうか。
エジプトで長期独裁政権に対する反政府勢力のデモの拡大がニュースになっていますが、ロシアでは、独裁問題だけでなく、民族問題が、常に火種になっています。
 
 故アンナ・ポリトコフスカヤ女史の執筆された「チェチェン やめられない戦争」(NHK出版)は、読みました。書けない部分を敢えて踏み込んで書いた女史の勇気を偲び謹んでお悔やみを申し上げたいと思います。
これによりチェチェンの情報が少なくなりました。チェチェンには穏健派の帰還があったと新聞等には書いてありますが、本当にそうなのでしょうか。ロシアのマスコミは大政翼賛会もどきになっていて、何か真実か、特に政治に関わる出来事は大変わかりづらくなっています。

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