ˡΧ̳
時事問題 : ファイナンスリースと税制と、技術独占
投稿者 : admin 投稿日時: 2011-11-15 (4738 ヒット)
何か事業を興し、事業規模を拡大するにあたって、真っ先に拡充しなければならない設備は、インフラすなわち通信設備の拡充です。
今時は、名刺に携帯電話を書き、顧客とのやり取りはすべて携帯かメールということもありますが、ある程度の規模になれば、機能の多様性を考えれば、ビジネスホンが欲しくなります。子機1台対応のダブルチャンネルだけでは足りなくなってきます。

ビジネスホンは、複数回線の電話を数台の電話で同時に通話できるだけでなく、どの受話器からも同じように複数の電話を受信できるという意味では、他に代え難い機能があります。
しかし、ビジネスホンは、総じて値段が高い。子機数台の家庭用電話機が1,2万円で買えるのに、ビジネスホンは購入価格(設定費込み)で60万円前後します。最初、この事実を知ったときは、金額の記載ミスかと思ったくらいです。
確かにビジネスホンは特殊な仕組みではありますが、ここ20年以上、価格変動がなく、高止まりしてします。電話機能だけを見れば、特殊性はありませんので、ビジネスホンの特殊な仕組み、基盤と、その技術的独占性が、高額な価値を維持しているとしか考えられません。
カラーでLAN付きのFAXコピー、スキャン複合機が、ビジネス用でも一ケタで購入できるのに、電話の機能しかない、ビジネスホンの方が最低でも50万円以上というのは、納得できかねます。
個人的には、是非、この市場にもっと企業が参入し、独占体制に市場原理を及ぼして欲しいと思います。

とはいうものの、この高額市場に対抗して成長しているのが、中古ビジネスホン市場です。ビジネスホンは、本体価格がやたら高いので、リース落ち等の中古ビジネスホンを安く仕入れることによって、中古市場は高い価格競争力があり、大変魅力的です。
 中古だと、最安値で、6,7万円で設置できるわけですから、いろいろなものに目をつぶっても、とても魅力を感じます。

 高額なビジネスホンの取得方法として、伝統的に行われることは、ファイナンスリースを組み、少なくした月々の返済金額を支払っていくやり方です。
 ファイナンスリースでは、所有権を取得する場合と違って、税法上、全額を損金に組み入れられるから節税になる点、償却資産として資産税を支払わなくていいから節税になる点、メンテナンスが受けられる点が強調されます。
 しかし、これが、全く、くせ者の理屈なのです。
 確かに、リースにすれば、税法上は貸金ではなく、売買か賃貸に分類され(民法(債権法)改正検討委員会http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/Japanese/index_j.html
は全く逆を言っています。債権法改正で税法に変化は生じるのでしょうか)、300万円以下のリースで賃貸処理すれば全額損金計上でき、また、額が小さければ償却資産税を支払わなくていいわけですが、所有すれば経費として計上できるはずの減価償却が、経費にならないことと(5年償却の場合には、5年合計で購入金額の95%を経費計上できる)、リース代として割高な利息を支払っている関係で(場合によりますが、リースを組むと、だいたい15%程度余計に支払うのではないでしょうか。)、節税メリットがあるか、甚だ疑問です。私は、節税にはならない場合が多いと思っています。

(2012.9.29補足)
 また、会計知識があれば当然のことですが、減価償却は月ごとの償却もあるわけで、結果としてリースの支払いと会計上は異なることは全くありません。しかも、リース終了の場合の処分費は、ご存じのとおり、リース期間が終わって何年もたてば、リース会社より「うちは記録が残っていない。勝手に処分してください」と言われ、処分費も出してくれません。

 落雷での故障などでは保険適用があるからリースがいいと言っている人もいるようですが、仕事を通じても落雷により電話機が故障したとう話は一度も聞いたことがありません。そもそも、落雷で電話線や電線に通電することは、どのくらいの確率であるのでしょうか。ほぼ0%ではないでしょうか。また、漏水などの故障に関しては、通常の店舗や事務所の動産保険が適用されます。

 また、機械メンテナンスも、購入しても保守サービスのオプションを付けられる場合も増えてきています。更に、改正債権法審議案でもそうですが、もともと、ファイナンスリースは「メンテはユーザー負担」が原則なので、リースにメリットはありません。

 そもそも、ファイナンスリースというのは、リース会社は、各販売業者に事前に加盟店契約とリースを組める商品を限定指定し、対ユーザーとの関係より、2社の方が余程密接な関係にあるのに、リース会社の「申し込みがあったから、リース物件を購入してリースを組んだたけ」「お金だけ出すから、リースによって生じるリスクは一切負わない」というスタンスがまかり通る仕組みです。ユーザーはリース目的物の直接の当事者でないため、リース物件に対するクレームを誰にも付けられません。
しかも、ファイナンスリースは、一旦リースを始めると、契約上は、途中で解約することができません。全額の支払い義務が最初から予定されているため、分割で商品を購入するのと金額は全く変わりません。
現在、債権法の改正審議がなされていますが、なぜだかよくわかりませんが、リース会社に極端に有利になることで、素案骨子が固まっているようです(http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/Japanese/index_j.html
2008年9月23日「ファイナンス・リース」の改正試案 民間の委員会ですがメンバー構成から見ると改正への影響力大と考えます。参照)。

 今までの惰性か、役所等の公共機関の備品でも、リースのシールはよく目につきます。
 お金を貸すのであれば、貸金業法、出資法いろいろ規制法があるのですが、残念なことに、ファイナンスリースに関しては、規制法はありません。そればかりか、改正債権法では、現在のファイナンスリースの制度の追従をする内容が規定される方向になっており、リース会社に一方的に有利な状態が確立するようです。
 もともと、加盟店契約をしているリース業者の販売業者の結びつきは強いわけですから、この2社がタグを組めば、してやられるユーザーも結構いるのは事実です。ファイナンスリーストラブルは、実際、後を絶ちません。
 税法は、どこかで得をすれば、どこかで得にならないような仕組みになっているのですが、セールスマンは、得にならないデメリットなど教えません。

 私は、この成熟したリサイクル社会においては、メーカーが直接行うリースは別として、ファイナンスリースは、中古市場が取って変わるべきだと考えています。

 購入したい商品が高額なため、セールスマンにリースを勧められた場合には、分割で購入できないか、ファイナンスリースではなく、直接リースをしているメーカーは無いのか、中古市場はないのか、是非確認されることをおすすめします。
 高額商品には、ほぼ確実に、中古市場が存在します。
 また、まれに、大型機械では、メーカーが直接リースをしている場合があり、その場合には、仮に支払えなくなっても、機械を回収すれば、残金が発生しないシステムを取っているところがあります。そういうところがないか探して下さい。これができるのは、回収すれば、リース先を探せるという自信、すなわち自社製品に対する自信があるからなのでしょう。個人的には、それは、いい商品の証と考えています。

 ファイナンスリースというのは、メーカー直接のリースと異なり、ユーザーに取ってはいいことがない契約であることは、これから起業・拡大する方は、覚えておかれるといいと思います。
 改正債権法審議の流れがユーザーに圧倒的に不利で、しかも、ファイナンスリースの仕組みは、言われるほど節税メリットがないのですから、ファイナンスリースを組まないという自己防衛は、かなり重要です。

印刷用ページ